中国から労働者を閉め出された北朝鮮 開城工業団地をひそかに再稼働
今年4月からは、中国国内の北朝鮮レストランで働く女性従業員についても、ビザの取得要件が強化され、違反している者は北朝鮮に送還されてきたが、今回の中国内の北朝鮮企業閉鎖対象には北朝鮮レストランも含まれており、女性従業員たちの帰国が増えたものとみられる。
米国政府は、中国とロシアを中心に北朝鮮の労働者たちが、全世界に約10万人程度派遣され、毎年5億ドル(=約562億円)を稼ぎ、金正恩政権の外貨稼ぎの窓口の役割を果たしていると推定している。
9月に国連安保理で採択された制裁決議2375号によると、外国企業が北朝鮮の労働者を雇用するためには、安保理の許可が必要とされており、従来から海外で働いている北朝鮮の労働者らも、契約期間が満了すれば、雇用延長を認めないようにした。
中国から開城へ
こうした海外から追い出された北朝鮮労働者の行き先として、今、注目されている場所が、韓国との共同事業を行うために開発された開城(ケソン)工業団地だ。
韓国が資本と技術力と投資し、北朝鮮が労働力を提供して製品を作る、南北共同事業として策定された開城工業団地は、2000年に金大中大統領と金日成総書記による歴史的な南北首脳会談が行われた際に合意して始まった、いわば南北融和の象徴ともいえるプロジェクトだった。開城は北朝鮮第3の都市でありながら、軍事境界線までわずか10km、ソウル、仁川国際空港までそれぞれ数十kmという地の利もあって選ばれた。
だが、北朝鮮側が金正恩体制に移行し、核開発とミサイル発射実験によって南北間の関係は悪化。2016年2月に北朝鮮が弾道ミサイル発射実験を行ったことを受けて、当時の朴槿惠(パク・クネ)大統領が開城工業地区の操業停止と韓国人の引き上げを決定。韓国からの送電も停止し、開城工業団地は事実上休眠した。