最新記事

ロシア

中国人観光客、「爆買い」の次は革命ツーリズム

2017年9月19日(火)12時00分
エイミー・フェリスロットマン

ロシア政府は今のところ、革命100周年について公式な見解を出しておらず、最小限の範囲で言及するというアプローチを選んだようだ。国家主義を高揚させるために歴史を利用し、時には独創的に語り直す国にしては、珍しいことだ。

文化省はプーチンの指示を受けて、小規模な展覧会やコンサートを開催している。しかし、第二次大戦の対ナチスドイツ戦勝記念日にモスクワで毎年行われる軍事パレードのような派手なイベントは一切見当たらない。

「ロシア人、特に若い世代は革命の過去を懐かしむこともない。過去を祝うためにカネを費やすつもりもない」と、ペトロフスキーは言う。

ロシアと中国の関係を考えると、ロシアが多くの中国人観光客を迎えるようになったのは、両国がより緊密な外交関係を模索し始めた時期と重なる。

【参考記事】北朝鮮を20年も放置した中国は責任を取るべき

7月にロシアを訪れた習は、今年3回目となるプーチンとの首脳会談に臨み、両国関係は「歴史上、最高の状態」だと述べた。2人はシャンパンで乾杯する姿を報道陣に撮影させ、両国企業は総額100億ドルの合意を締結した。

「紅色旅遊は控えめなプロパガンダであり、ソフトパワーの道具だ」と、ペトロフスキーは指摘する。両国の友好関係は地政学的に好ましいだけではない。資金不足に苦しむロシアにとって、中国からの経済支援は大歓迎だ。

今年、特に人気が高まりそうなのは、ボルガ川流域のレーニン生誕の地ウリヤノフスク。モスクワから東へ約900キロ離れたこの町を訪れる中国人観光客は、今年は昨年より1000人多い約6000人に達する見込みだ。

ウリヤノフスク側も準備を整えている。路面には、中国語とロシア語でカール・マルクスの名言が記されている。レストランは中国語のメニューを用意。レーニンの生家の近くにあるホテルは、基本的な中国語が分かるスタッフをそろえた。

レーニンが幼い頃に暮らした家など、市内には数多くの記念館がある。旧ソ連時代の服を着て、当時の少年団のトレードマークだった赤いスカーフを首に巻いた中国人グループを見掛けるときもある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、金上昇で第1四半期は黒字 株安やフラン

ビジネス

ニデック、26年3月期は8.2%の営業増益見込む 

ビジネス

カプコンの25年3月期、営業益17億円上振れ 市場

ワールド

トランプ氏、大学に一段の圧力 奨学金巡る認定厳格化
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 2
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 6
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 7
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 8
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「iPhone利用者」の割合が高い国…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 7
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中