最新記事

テロ組織

「選ばれし者」アルカイダの次期指導者はハムザ・ビンラディンで決まり?

2017年9月13日(水)20時45分
ジャック・ムーア

国際テロ組織アルカイダの指導者だったウサマ・ビンラディンの息子ハムザ(写真左)。アフガニスタン中部ガズニ州で2001年頃に撮影されたと見られる REUTERS/Al-Jazeera TV

<ウサマ・ビンラディンの20人以上いる子供のなかでもハムザは幼い頃からアルカイダのプロパガンダに登場し、今もイスラム聖戦運動の中で抜群の知名度と過激さを備えている>

9.11米同時多発テロ16年周年の前日、テロ組織アルカイダは自分たちがジハーディスト(聖戦士)として世界に名を轟かせた9.11当日に4つのメッセージを発表すると予告した。投稿されたメッセージの1つには、世界貿易センタービルに激突しようとする航空機のシルエットや、炎上するツインタワーの画像が載っていた。興味深いのは、そのツインタワーと重ねるように、2人の人物の姿が写っていたことだ。1人は9.11テロを指揮したアルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン。もう1人はその息子、ハムザ・ビンラディンだ。

【参考記事】9.11から16年、アメリカの分断

現在20代後半のハムザは、幹部の高齢化が進むアルカイダの若き後継者だ。アルカイダは、テロ組織ISIS(自称イスラム国)がイラクとシリアにまたがるカリフ国家を樹立し勢いづいた間に存在感を失った。ハムザは今、父ビンラディンの威光を、強力なプロパガンダに利用している。ハムザの名前は、欧米社会でも、広い意味でのイスラム聖戦運動の中でも、抜群の認知度がある。

アメリカはすでにハムザを「国際テロリスト」に指定しているし、あるイギリスの政治家はハムザを「テロの皇太子」と呼んだ。アルカイダの最高指導者アイマン・アル・ザワヒリは2015年8月の音声メッセージで、ハムザを「アルカイダの獅子」と紹介した。ハムザはアルカイダのプロパガンダを一手に担いつつある。

hamza-bin-laden.png

9.11テロ16周年の日にアルカイダが公開したツインタワーにはビンラディン父子の姿が重なっていた AL-QAEDA MEDIA

表に出れば殺される身の上

アルカイダのプロパガンダ部門アズ・サナブは今年5月、「欧米の殉教志願者」に向けた「助言」と題したハムザの音声メッセージを、英語とアラビア語で公開した。ハムザは中東、とりわけシリアやイラク、アフガニスタン、ヨルダン川西岸やガザ地区で戦うイスラム教スンニ派を支援するためジハーディストが団結するよう呼び掛けた。

【参考記事】ベニスで「アラーは偉大なり!」と叫んだら射殺

「できるだけ多くの敵を殺害できるように、標的の選定を完璧にせよ」とハムザは言った。「武器の選択でプロ意識を持て。必ずしも軍用の武器を取る必要はない。銃を取れればそれでいい。それができなくても、他の選択肢はたくさんある」

アルカイダがハムザを貴重な後継者として守っていることを示すヒントは他にもある。アルカイダは成人後のハムザの容姿をまだ一度も公表していない。公表すれば敵軍の関心を呼び、命を狙われてしまうからだ。事実、ハムザの兄サード・ビンラディンは2009年に米軍がパキスタンで行った空爆で死亡し、義理の兄でアルカイダのナンバー2だったハイル・アル・マスリも今年アメリカ主導の有志連合がシリアで行った空爆で死亡した。

【参考記事】バルセロナで車暴走テロ、はねられて「宙に舞う」観光客

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏側近、大半の輸入品に20%程度の関税案 

ワールド

米、中国・香港高官に制裁 「国境越えた弾圧」に関与

ビジネス

英インフレ期待上昇を懸念、現時点では安定=グリーン

ビジネス

アングル:トランプ政権による貿易戦争、関係業界の打
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中