コンゴ・カビラ大統領とルワンダの利権 ----コンゴ中央部、国連とムクウェゲ医師の「忘れられた危機」
それと同時に、国連や昨年初来日したデニ・ムクウェゲ医師(上記の記事参照)を巻き込んださまざまな「忘れられた危機」が起きており、それらはすべてJ・カビラ大統領(とルワンダ政府)の利権のもとで相互に関連しあっている。
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カサイ州における「暴力」の背景
カサイ州では1960年代、コンゴからの分離独立運動に伴って、多くの死者や国内避難民が発生したが、それ以降は比較的安定していた。そのカサイ州で昨年8月以降、「暴力」が続いていると国際メディアは報道している。が、その実態はほぼ「虐殺行為」に近いと考えられ、8月現在、死者は3,300人以上にのぼり、集団墓地も80カ所発見された。その「暴力」の原因とは一体何であろうか?
カサイ州にはもともとナショナリストが多く、パトリス・ルムンバ(Patrice Lumumba)初代首相(1961年にCIAとベルギー政府によって暗殺される)や、50年以上野党で活動し、国民的英雄でもあるエティエンヌ・チセケディ野党党首(Etienne Tshisekedi)の出身地である。同州の伝統的首長カムウィナ・ンサプ(Kamuina Nsapu)氏も野党の支持者であったため、当然、中央政府から敵視されていた。
その中央政府が2015年、伝統的首長の権威を検討する法律を成立した。伝統的首長とは、家庭内問題や土地問題などを解決するという大事な役割を果たしている。コンゴ全州の伝統的首長のほとんどがカビラ大統領の支持者であるが、この法律は、伝統的首長に対して間接的にJ・カビラ大統領への忠誠を誓わせるもので、伝統的首長にとって脅迫を意味している。
そして2016年初め、警察と政府軍が、カサイ州民の伝統文化やアイデンティティの象徴として捉えられていた伝統的首長の屋敷を破壊し、現地の人々に大きな衝撃を与えた。このことを受け、同年6月、ンサプ首長はJ・カビラ大統領の退陣(後述)を求めて蜂起したのだが、2カ月後の8月に殺害され、同首長の支援者と支援組織が政府軍に対して立ち上がった。
このカサイ州の「暴力」は意図的に長期化し、悪化させられていると疑われている。それは、コンゴ南東部のカタンガ州にいる民兵「カタ・カタンガ」(Kata Katanga)をカサイ州に輸送し、暴力を振るわせていると言われているからだ。カタ・カタンガはもともとコンゴ政府と敵対関係であったが、政府はカビラの私利のために、この民兵を利用することにした。その証拠として、カタ・カタンガのリーダー、ゲデオン・キュング(Gedeon Kyungu)は以前、ある罪で投獄されたことがあり、その後、刑務所から逃亡したのだが、2015年以降、政府の迎賓館に住んでいる。