最新記事

人道問題

コンゴ・カビラ大統領とルワンダの利権 ----コンゴ中央部、国連とムクウェゲ医師の「忘れられた危機」

2017年9月11日(月)18時00分
米川正子(立教大学特定課題研究員、コンゴの性暴力と紛争を考える会)

このように人為的に国内が不安定化することは、J・カビラ大統領にとって都合がよい。というのも、昨年12月にJ・カビラは2期の任期満了を迎えたが、大統領選を実施しないまま大統領職に居座り続けている。国内の不安定化がまさしく選挙を延期する口実になっているからである。

ルワンダがカサイ州の「暴力」を裏工作

カサイ州の「暴力」の裏にいたのはカタ・カタンガだけではない。隣国ルワンダが工作していたことも発覚された。

ラジオ・フランス・インターナショナルのジャーナリスト、ソニア・ロリー(Sonia Rolley)の報告書によると(注1)、1996年以降のコンゴ東部の紛争に関与していた反政府勢力のエリック・ルホリンべレ将軍(Eric Ruhorimbere、ルワンダ系コンゴ人)がカサイ州の「暴力」に加担している。

ルワンダは1996年から2013年まで、AFDL、RCD、CNDP、M23と次から次へと「コンゴ」の反政府勢力を創設してきた。名前は変更しているものの、指揮を執るのはほぼ同人物である。それらの反政府勢力はコンゴ東部で大量殺戮などの重大な罪を犯してきたが、その加害者がカサイ州に移送され、そこで再び暴力などの罪を犯しているのである。約20年間の不処罰の文化が招いた悪循環だ。

ルワンダがコンゴの紛争に介入してきたことは、2001年以降の国連報告書などにより認知されていた。ルワンダのカガメ大統領の元側近であるテオジェン・ルダシングワ(Theogene Rudasingwa)元駐米ルワンダ大使曰く、

「第1次コンゴ戦争後(1996~1997年)、資金が軍隊を通じて入るようになった。が、その資金がルワンダ国家の金庫に収まることはなく、RPF(ルワンダ現与党)の資金になった。カガメ大統領のみがその金額や支出先について知っている。会合でもよく言っていた。『ルワンダを強化するためには、コンゴが弱体化し、分断されなければならない』と」(注2)

つまり、コンゴの紛争や暴力を意図的に長期化することによって、コンゴ東部の資源を不法に搾取してきたルワンダ政府、とりわけカガメ大統領が恩恵を受けてきたのである。そして大統領職に居座りたいコンゴのJ・カビラ大統領も。

J・カビラの実の国籍はコンゴ人ではなく、実の父親はルワンダ人で、母親はツチで、本名も「ヒポリテ・カナンベ」だと言われている。カガメの操り人形である。父親のローラン・D・カビラは、モブツ政権が打倒された1997年から暗殺されるまでの2001年にコンゴの大統領だったが、J・カビラはそれを引き継いだ。行政経験は全くなく、亡命先のタンザニアでは運転手や道端で卵売りとして働いていたにもかかわらずである。

ブルームバーグ誌によると、カビラ一家は国内のさまざまな企業を所有している。
https://www.bloomberg.com/news/features/2016-12-15/with-his-family-fortune-at-stake-congo-president-kabila-digs-in

――――――――
(注1)RFI, "RDC: Violence"
(注2)The Guardian, "Why Blair and Buffett are wrong about giving international aid to Rwanda", 12 April 2013

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベネズエラ、今月初めの米軍による攻撃で兵士47人死

ワールド

EU、重要インフラでの中国製機器の使用を禁止へ=F

ワールド

イラン抗議デモ、死者3000人超と人権団体 街中は

ワールド

韓国、米のAI半導体関税の影響は限定的 今後の展開
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向」語る中、途方に暮れる個人旅行者たち
  • 2
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手がベネズエラ投資に慎重な理由
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 5
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 6
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    日中関係悪化は日本の経済、企業にどれほどの影響を…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 8
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 9
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 10
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中