最新記事

検閲

欧米の名門大学よ、 中国マネーに屈するな

2017年9月1日(金)16時00分
クリストファー・バルディング(北京大学HSBCビジネススクール准教授)

大学の覚悟が問われる

欧米の大学は中国に対する見方を全面的に再検討する必要がある。彼らが中国に進出して学問の自由を守り、広げられるというのは全くの幻想だ。進出するなら、共産党の宣伝マシンになる覚悟をすること。

そして本国では、学問と言論の自由を断固として守るべきだ。中国の学者を招いて香港の民主化運動について語ってもらう、あるいはダライ・ラマ14世を講演に招くといった場合も、中国当局にお伺いを立てる必要はない。中国人留学生が領土問題などで国家主義的な主張を振りかざし、講師や仲間の学生に嫌がらせをしたら、大学当局はしかるべき処分をするべきだ。

共産党幹部の子供の留学についても一考の余地がある。党幹部の年収は表向き2万ドル足らずのはずなのに、その子供がアメリカの名門大学で学び、自由を謳歌している。中国にいる彼らの親は、欧米の思想や文化の流入を厳しく制限しているというのに。党幹部の子供の留学受け入れについては、暫定的な中止措置を検討してもいい。

【参考記事】日本とアジアの間にそびえ立つ巨大すぎる慰安婦像

加えて、中国の大学に招聘された研究者は学問の自由を圧殺する体制を手放しで称賛するなど、翼賛的な御用学者にならないよう自重する必要がある。

今の中国では文化大革命以来、最大の言論統制の嵐が吹き荒れている。相互交流を通じて中国の大学にリベラルな風を吹き込めるなどと考えるのは甘い。チャイナマネーの誘惑に負けず、原則を貫けるか。欧米の大学の信念が問われている。

From Foreign Policy Magazine

<本誌8月29日発売最新号掲載>

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、米のウクライナ停戦案に懐疑的 高官筋が指摘

ワールド

中国商務省がウォルマートと協議、米関税コスト転嫁報

ワールド

ゼレンスキー氏故郷と南部オデーサにミサイル攻撃、少

ビジネス

「ザラ」のインディテックス、24年度10.5%増収
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 3
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「腸の不調」の原因とは?
  • 4
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 5
    スイスで「駅弁」が完売! 欧州で日常になった日本食、…
  • 6
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 7
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 8
    トランプ=マスク独裁は許さない── 米政界左派の重鎮…
  • 9
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 10
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 4
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 5
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中