欧米の名門大学よ、 中国マネーに屈するな
ミイラ取りがミイラに
台湾やチベット、天安門事件など、暗黙のうちにタブーになっているテーマもある。中国に進出したアメリカの大学を調べた米政府監査院(GAO)の最近の報告書によると、中国人学生は自分の言ったことを同級生が当局に知らせるのを恐れて、タブー視されている問題についての発言を自己検閲している。
中国の大学では共産党員が学生に紛れて講義を聞き、内容をチェックしている。学長や学部長、理事長など管理職に昇進できるのは共産党員だけだ。
習政権の汚職一掃キャンペーンを主導する強大な権限を持つ共産党の機関・中央規律検査委員会が最近実施した監査では、欧米の思想を比較的オープンに受け入れている北京大学や清華大学などが「思想的、政治的」に弱体だと批判された。
欧米の大学側は中国の大学と提携することで学問や言論の自由を中国に広げられると主張するが、現実にはミイラ取りがミイラになっている。学問の自由より提携の存続を重視し、中国の検閲に加担するありさまだ。
ケンブリッジ大学出版局の決定も経営上の判断だった。中国の要請に応じなければ、サイト内の全ての論文が中国国内では閲覧できなくなる可能性があったと、同出版局は説明。実際、問題の論文が再び閲覧できるようになると、中国側は独自にアクセス遮断の措置を取った。
【参考記事】「雨傘」を吹き飛ばした中国共産党の計算高さ
それでも、学問の自由の守り手を自任するなら、最初に要請があった時点で毅然として突っぱねるべきだった。気になるのは中国に対する弱腰がケンブリッジに限らないことだ。多くの著名な教育・出版機関がチャイナマネーを失うまいと中国の言いなりになっている。
アメリカの大学は多様な文化圏から留学生を受け入れたり、ドナルド・トランプ米大統領の移民規制に抗議したりして、コストをかけずにリベラルなイメージを売り込んでいる。その割に中国当局に要求されれば、学問の自由をやすやすと譲り渡す。中国当局と良好な関係を保てば、大きな収益がもたらされるからだ。その現実を前にすれば、原理原則はいとも簡単にねじ曲げられてしまう。
欧米の大学と出版局を悩ますのは厳しい二者択一だ。中国の要求に応じて検閲と人権侵害に加担するか、要求を突っぱねて巨額の収益や寄付金を失うか。
このジレンマから抜け出す方法はある。まず欧米の大学の図書館が、検閲に加担する出版局の出版物や学術誌の受け入れを拒否すること。出版局にとっては大学の図書館から締め出されるほうがチャイナマネーを失うより大きな痛手となる。
次に、研究者は検閲に加担した学術誌に論文を提出せず、提出された論文の査読をせず、掲載論文を引用しないことだ。