4選狙う独メルケル首相 難民巡る「どん底」からの復活劇
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9月10日、難民申請者に2年前国境を開放したメルケル独首相は、その後自身の支持率が急降下するなかで、これまでの政治キャリアにおいて「どん底」とも言える状況からはい上がってきた。写真は12日、独ベルリンで同首相の選挙ポスターを貼る男性(2017年 ロイター/Fabrizio Bensch)
メルケル首相は、ドイツ北部で最近行った選挙演説の終盤で、2015年の欧州難民危機に触れ、二重の意味をはらんだ元気づけるメッセージを聴衆に送った。
漁村スタインヒュードに集まった1000人を超える聴衆に対して、中東の戦火や迫害から逃れてきた数十万人の難民申請者に対して暖かい歓迎を示したことを、ドイツ国民は誇りに思うべきだ、とメルケル首相は語りかけた。
そこで語調を変え、「2015年に起きたことの再現はあり得ないし、それを許してはならない」と断言した。
今月24日実施されるドイツ連邦議会(下院)選挙において、4選が有望視されるメルケル首相は、このフレーズを各地の街頭演説で繰り返してきた。
2年前、メルケル首相は「迫りくる人道上の大災害」を防ぐため、難民申請者に国境を開放した。その結果、自身の支持率が急降下するなかで、同首相はこれまでの政治キャリアにおいて「どん底」とも言える状況からはい上がってきた。
この復活劇には多くの要因がある。だがそのなかでも特に重要だったのは、2015年の国境開放に対する賛否はともかく、難民危機について、ドイツ国民の多くが支持できるストーリーを紡ぎ出すことのできるメルケル首相自身の手腕だ。
「メルケル首相は国境開放政策を争点に掲げておらず、そのことが国内の空気にぴったり合っている」とドイツ政府の難民危機対応についてベストセラーを執筆したロビン・アレクサンダー氏は語る。
「多くの人々は、ドイツが人道的行為の模範であるというイメージを好む。その一方で、以前のようにこの国が難民を歓迎し続けることはできないということも分かっている。こうした絡み合った感情にメルケル氏はアピールしている」
2015年末までにドイツに入国した難民申請者は89万人。多くは適切な身元確認もなく、その流入は地元コミュニティを圧倒した。
メルケル首相の行動は、欧州を分断へと導き、反移民感情の台頭を招いた。強硬右派政党「ドイツのための選択肢」(AfD)も、今回の選挙で連邦議会での初議席獲得が確実視されている。