第19回党大会と新チャイナ・セブン予測(1)
最後の「中共中央政治局常務委員会委員7名」を筆者は「チャイナ・セブン」と名付けた。胡錦濤政権時代、この委員の数が「9人」だったので、それを「チャイナ・ナイン」と名付けたからである。筆者が苦労して思いついた「チャイナ・ナイン」や「チャイナ・セブン」を、すでに存在している報道用語のように使ってくれるのは嬉しいことだ。
読売新聞の新チャイナ・セブン「判明」報道に関して
さて、この新チャイナ・セブンに関して8月24日付の読売新聞が「中国次期指導部リスト判明、王岐山の名前なし」という見出しの報道をした(昨日まで見ることができたのに、なぜかこの記事が見えないようになっている)。
判明――?
このリストは党大会までは絶対に秘密で、もしこの情報を外部に漏洩(ろうえい)した者がいたとすれば、党機密情報漏洩罪などに問われるから、「判明」ということはあり得ないと、筆者はまず反射的に思った。
本気で「判明」と書いたとすれば、よほど中国共産党の内部事情を知らない記者が書いたか、死を覚悟の上で漏洩した者がいたかのどちらかだろうと考えるのが、中国共産党政治の基本ルールを知っている者の反応のはずだ。上述のように中共中央委員会の委員も中共中央政治局委員もその常務委員(チャイナ・セブン)も、みな党大会における一連の「選挙」で選ばれることになっているから、党大会開催前に「判明」すること自体、あり得ない。
そもそも読売新聞の報道では、「政治局委員」を「政治局員」と書くなど(7名の一覧表の左、真ん中)、きっと中国共産党の基本構造もご存じないにちがいないと思われる。中国では「委員」というのは特別の意味を持っており、「局員」は行政(国務院管轄側)の職員に用いる場合があるが、一般に使わない。非常に日本的な発想の政治専門用語である。ここに、信憑性を揺らがせる二つ目の原因がある。
おまけに、あの江沢民のために生きているような韓正を「習派」(習近平派)と書いてある。何ごとか、目を疑った。
すると間髪を入れず、アメリカやイギリスの多くの中文メディアや香港メディアなどが、一斉に同様の疑義を発信し、「信頼性がない」と断罪しているのを発見した。たとえば「韓正が習派だって?」という報道では、「それを見ただけで、これは真実性のない情報だということがすぐにわかる」と書いているし、また「王岐山の名前なし」に焦点を当てて、「ああ、これは江沢民派のヤツに嵌められたな」という批判もあり、なかなかに厳しい。
基本、数多くの「予測ヴァージョン」は早くから出ているが、それらはあくまでも「予測」と断り、非常に用心深く掘り下げて慎重に「予測」を報道しているので、世界の関係者は誰もが「判明」という言葉にひっかかってしまったのだろう。
もしかしたら、結果的に読売新聞が「判明した」とされるリスト通りになるかもしれない。その可能性は否定できない。