第19回党大会と新チャイナ・セブン予測(1)
しかし読売新聞自身、よくよく読むと紙ベースの新聞では、「王岐山 名前なし」という見出しの下に「退任有力説」と書いてあり、本文にも「定年に関する慣例を覆して留任するとの観測もあった王氏の処遇を巡っては、党内ではいまだに賛否両論が存在しているといい、リストの最終的な顔ぶれも含め、党大会まで駆け引きが続くものとみられている」と、キチンと逃げを打っているではないか。
それなら「判明」などと書かなければよかったのにと、他人事ながら気の毒にも思う。
その他の批判
読売新聞のこの記事は、ネットでは会員登録しないと読めないが(本日9月1日になり、突然、ネットでも読めなくなっている)、紙ベースの新聞紙面では、最後に(北戴河の会議では)「習氏側の人事案を基本的に了承したという」と結んでいる。
これに関する中国大陸以外の海外中文メディアの批判は、かなり凄まじい。
習近平が闘っているのは腐敗集団であり、腐敗のトップにいるのは江沢民であるため、結果的に江沢民派と闘っていることになる。これを「内部の権力闘争」と位置付けると、習近平政権がいま何を目指し、いかなる野心を国際社会において抱いているかが見えなくなるので非常に危険だと、筆者は何度も警告しているつもりだ。この問題は今後このコラムの「予測」シリーズで論じていくが、今回は取り敢えず海外中文メディアの反応に触れておく。
権力闘争であるか否かは別として、少なくとも習近平が江沢民派(腐敗擁護派)と闘っていることは事実だ。そこで海外の中文メディアは以下のような批判を浴びせている。
●ならば、なぜ「習氏側の人事案」に江沢民派の韓正が入っているのか?
●矛盾を無くすために韓正を「習派」と強引に書き換えたのか?
●王岐山を外したリストを「判明」という言葉で断定的に発表して韓正を入れたのは、江沢民派がメディアを買収してよくやる「アドバルーン」手段で、昔は胡錦濤を追い込むためによく使ったが、今回は習近平を追い込むために使っているに過ぎない。
●日本のメディアなら騙しやすいので、「政府に近い党関係者や外交筋」が情報源だなどとして特定の情報を故意に流したのではないのか?
●「毛沢東時代の党主席制復活」などと書いておきながら、常務委員は7名保留しているというのは矛盾だ。
このような批判が延々と続く。
筆者自身には別の見解があり、新チャイナ・セブン予測に関するコラムをしばらく続け、他の多くの「予測ヴァージョン」とともに、何が問題点で、それによって何が変わるのか等、今後の予測シリーズの中で述べたいと思っている。長くなったので、「予測シリーズ第一回目」はここまでとする。
(なお昨夜まで読売新聞の当該記事は普通にアクセスできていたので、それに基づいてこのコラムを書いた。突然アクセスできなくなった理由は分からないが、コラムの読者の方には、アクセスできることを前提で書いたことを、大変申し訳なく思う。お許しいただきたい。念のため、その記事に書いてある次期指導部リストは「習近平、李克強、汪洋、胡春華、韓正、栗戦書、陳敏爾」である)
★いま気が付いたが、「韓正が習派だって?」のページの下の方に、読売新聞の記事が貼り付けてあったので、興味のある方は、それを見ていただきたい(9月1日午後3時)。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。