最新記事

中国共産党

第19回党大会と新チャイナ・セブン予測(1)

2017年9月1日(金)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

しかし読売新聞自身、よくよく読むと紙ベースの新聞では、「王岐山 名前なし」という見出しの下に「退任有力説」と書いてあり、本文にも「定年に関する慣例を覆して留任するとの観測もあった王氏の処遇を巡っては、党内ではいまだに賛否両論が存在しているといい、リストの最終的な顔ぶれも含め、党大会まで駆け引きが続くものとみられている」と、キチンと逃げを打っているではないか。

それなら「判明」などと書かなければよかったのにと、他人事ながら気の毒にも思う。

その他の批判

読売新聞のこの記事は、ネットでは会員登録しないと読めないが(本日9月1日になり、突然、ネットでも読めなくなっている)、紙ベースの新聞紙面では、最後に(北戴河の会議では)「習氏側の人事案を基本的に了承したという」と結んでいる。

これに関する中国大陸以外の海外中文メディアの批判は、かなり凄まじい。

習近平が闘っているのは腐敗集団であり、腐敗のトップにいるのは江沢民であるため、結果的に江沢民派と闘っていることになる。これを「内部の権力闘争」と位置付けると、習近平政権がいま何を目指し、いかなる野心を国際社会において抱いているかが見えなくなるので非常に危険だと、筆者は何度も警告しているつもりだ。この問題は今後このコラムの「予測」シリーズで論じていくが、今回は取り敢えず海外中文メディアの反応に触れておく。

権力闘争であるか否かは別として、少なくとも習近平が江沢民派(腐敗擁護派)と闘っていることは事実だ。そこで海外の中文メディアは以下のような批判を浴びせている。

●ならば、なぜ「習氏側の人事案」に江沢民派の韓正が入っているのか?

●矛盾を無くすために韓正を「習派」と強引に書き換えたのか?

●王岐山を外したリストを「判明」という言葉で断定的に発表して韓正を入れたのは、江沢民派がメディアを買収してよくやる「アドバルーン」手段で、昔は胡錦濤を追い込むためによく使ったが、今回は習近平を追い込むために使っているに過ぎない。

●日本のメディアなら騙しやすいので、「政府に近い党関係者や外交筋」が情報源だなどとして特定の情報を故意に流したのではないのか?

●「毛沢東時代の党主席制復活」などと書いておきながら、常務委員は7名保留しているというのは矛盾だ。

このような批判が延々と続く。

筆者自身には別の見解があり、新チャイナ・セブン予測に関するコラムをしばらく続け、他の多くの「予測ヴァージョン」とともに、何が問題点で、それによって何が変わるのか等、今後の予測シリーズの中で述べたいと思っている。長くなったので、「予測シリーズ第一回目」はここまでとする。

(なお昨夜まで読売新聞の当該記事は普通にアクセスできていたので、それに基づいてこのコラムを書いた。突然アクセスできなくなった理由は分からないが、コラムの読者の方には、アクセスできることを前提で書いたことを、大変申し訳なく思う。お許しいただきたい。念のため、その記事に書いてある次期指導部リストは「習近平、李克強、汪洋、胡春華、韓正、栗戦書、陳敏爾」である)

★いま気が付いたが、「韓正が習派だって?」のページの下の方に、読売新聞の記事が貼り付けてあったので、興味のある方は、それを見ていただきたい(9月1日午後3時)。

endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

欧州委員長、米関税に「相応の対抗措置」 12日に貿

ビジネス

米国の関税は容認できず、断固とした対応も=トルドー

ワールド

トランプ氏、就任後に中国主席と電話協議 「良好な個

ワールド

人質解放、停戦合意順守が唯一の道 脅しは無意味=ハ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国経済ピークアウト
特集:中国経済ピークアウト
2025年2月11日号(2/ 4発売)

AIやEVは輝き、バブル崩壊と需要減が影を落とす。中国「14億経済」の現在地と未来図を読む

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 2
    iPhoneで初めてポルノアプリが利用可能に...アップルは激怒
  • 3
    「だから嫌われる...」メーガンの新番組、公開前から大炎上の納得理由
  • 4
    極めて珍しい「黒いオオカミ」をカメラが捉える...ポ…
  • 5
    メーガン妃の最新インスタグラム動画がアメリカで大…
  • 6
    研究者も驚いた「親のえこひいき」最新研究 兄弟姉…
  • 7
    36年ぶりの「絶頂シーン」...メグ・ライアンの「あえ…
  • 8
    世界のパートナーはアメリカから中国に?...USAID凍…
  • 9
    Netflixが真面目に宣伝さえすれば...世界一の名作ド…
  • 10
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギー不足を補う「ある食品」で賢い選択を
  • 3
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 4
    教職不人気で加速する「教員の学力低下」の深刻度
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    戦場に響き渡る叫び声...「尋問映像」で話題の北朝鮮…
  • 8
    Netflixが真面目に宣伝さえすれば...世界一の名作ド…
  • 9
    研究者も驚いた「親のえこひいき」最新研究 兄弟姉…
  • 10
    メーガン妃の最新インスタグラム動画がアメリカで大…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 5
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中