ダイアナを「殺した」のはマスコミか
60年代には、ジャクリーン・ケネディ・オナシスの二度の結婚によって多くのパパラッツィが大金を稼いだ。そうした写真の受け皿が増えるにつれ、彼らの行動はますます大胆になり、標的にされる有名人も増えた。
なかでもダイアナは最高の「獲物」だった。ほかにも大物はたくさんいたが、写真の買い手がつける値段の高さでは、彼女の右に出る者はいなかった。
ダイアナが、必要とあらばマスコミを利用したのは事実だ。BBCのインタビューに応じたのは離婚を有利に進めるためだったし、自分のかかわる慈善活動が取材を受けるときは嫌な顔ひとつ見せなかった。
それでも、マスコミが彼女にもたらしたものはプラスよりマイナスのほうが多かった。恋人のドディ・アルファイドと洋上で戯れているところを撮影した最近の写真には、600万ドルを超える値段がついた。スポーツジムから父親の葬儀まで、文字どおりあらゆる場所にパパラッツィは出現した。
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幅広いメディアのニーズ
パパラッツィにとって、どこまでが許容範囲で、どこからがそうでないのか。ロサンゼルス在住の芸能カメラマン、スコット・ダウニーにそう尋ねると、彼はこう答えた。「イギリス王室に関するかぎり、超えてはならない一線など存在しない」
「マスコミは残忍。人のあら探しをするだけだし、何をやっても批判される」。ダイアナは最近の仏ルモンド紙のインタビューで、痛烈にマスコミを批判していた。「私の立場におかれたら、正気な人間ならとっくに[イギリスを]出ているでしょう。でも私には無理。息子たちがいますから」
さらに、マスコミ側にもニーズが存在する。三流芸能紙や、イギリスの大衆紙だけではない。硬派のニュース雑誌やライフスタイル雑誌、テレビ番組など、相当数の媒体が有名人の写真を求めている。
本誌も、ときにパパラッツィの写真を掲載して利益を得たことは事実だ。たとえばケネディ・ファミリーの御曹司、ジョン・F・ケネディJr.と結婚したキャロリン・ベセットを特集した号では、パパラッツィが撮った写真をふんだんに使った。
今回の悲劇を契機に、こうした需要がすべてなくなるとは考えがたい。「短期的には誰もがひどく用心深くなるだろうが、いずれはすべてが元に戻る」と、欧州のある編集者は言う。