サマーキャンプの子供たちに、聖地「解放」の戦闘を教え込むハマス
ハマスは毎年実施しているサマーキャンプだと説明するが(写真は7月に実施された青年向けの訓練の様子) Ibraheem Abu Mustafa-REUTERS
<ハマスがサマーキャンプで子供たちに戦闘を模擬体験させる映像が公開された。ハマスは毎年やっているキャンプの一環というが、その内容は聖地をめぐる衝突に酷似している>
エルサレムの聖地の管理をめぐり、イスラエルとパレスチナの緊張が高まるなか、衝撃的な映像が公開された。イスラム原理主義組織ハマスが主催したサマーキャンプで、パレスチナ自治区ガザの子供たちがイスラエルの治安部隊との衝突を模擬体験する映像だ。
YouTubeのハマス系チャンネルに7月19日にアップされたこの映像では、エルサレム旧市街の聖地(ユダヤ教徒は「神殿の丘」、イスラム教徒は「高貴な聖域」と呼ぶ)に通じる門のレプリカを背景に、ハマスの戦闘員に扮した子供たちがイスラエルの警官に扮した子供たちと戦う。
この模擬戦闘は、サマーキャンプの「卒業式」として行われたと、地元イスラエルのメディアは報じている。映像は何人かの子供たちが門の前に集まる場面から始まる。彼らは聖地に礼拝に来たイスラム教徒という設定だ。
その1人が警官を刃物で刺し、別の警官に撃たれて倒れる。警官隊の激しい銃撃にさらされながら、イスラム教徒たちは「殉教者」を運び出す。そこにハマスの戦闘員に扮した子供たちが登場。門の前に設置された金属探知機を破壊し、「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫びつつ、聖地を占拠する。
メディアはこの映像を聖地「解放」のための戦闘訓練と報じているが、ハマスの報道官は本誌のメール取材に対し、こうした見方を否定した。「そうではない。ガザで毎年やっているサマーキャンプと同じで、子供たちのストレスを吐き出させ、彼らを取り巻く現実、彼らの苦しみの原因、未来をどう築くかを教え、父祖の地への愛を育むためのものだ」
【参考記事】エルサレムでの衝突はどこまで広がるのか──パレスチナ・イスラエルで高まる緊張
ガザは07年以降、事実上イスラエルの経済封鎖の下に置かれている。イスラエル軍の3度にわたる侵攻でインフラは崩壊。雇用をはじめ経済的機会は失われ、復興のめども立たず、国連は20年までに「居住不可能」になると予測している。
ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区を統治するパレスチナ解放機構(PLO)の幹部は、この映像は親イスラエル派が作った偽の映像の疑いがあると指摘。仮に本物だとしても、「意味がなく、(ハマスが)勝手にやっている」訓練だと切り捨てた。
欧米のメディアはこれまでにもハマスのサマーキャンプで子供たちが武器の扱いを教わったり、トンネル内で軍事訓練を行ったり、ユダヤ人入植地への襲撃を想定した訓練を行う映像を入手して報道してきた。