皇太子が電撃交代、サウジ王室の「クーデター」舞台裏

7月19日、先月サウジアラビアの王室で起きた「宮廷革命」によって、王位継承第1位の皇太子だったムハンマド・ビン・ナエフ氏は、国王の息子ムハンマド・ビン・サルマン氏(写真)に皇太子の座を譲り渡した。その秘められた内幕とは。パリで2015年撮影(2017年 ロイター/Charles Platiau)
過去20年にわたって、サウジアラビアの安全保障・治安部門トップの座にあり、王位継承第1位の皇太子だったムハンマド・ビン・ナエフ氏が先月20日、メッカにある王宮4階に呼ばれ、サルマン国王に謁見した。
「MbN」という通称で呼ばれるナエフ氏に近い関係筋によれば、このとき81歳の国王は、おいのナエフ氏に対し、自分のお気に入りの息子、ムハンマド・ビン・サルマン氏に役職を譲るよう命じたという。
鎮痛剤の乱用によって判断力が落ちている、というのが解任の理由だった。
「国王がナエフ氏との謁見場所に来て、室内には彼ら2人だけが残った。国王はナエフ氏に『退任を希望する。薬物中毒が判断力に危険な影響を及ぼしており、その治療を勧められても聞き入れなかった』と告げた」とこの関係筋は語る。
事実上の「宮廷革命」を引き起こした異例の謁見に関する詳細が新たに伝えられたことで、世界最大の石油輸出国のリーダーシップを再構築しつつある事件の真相が明らかになってきた。
ロイターはナエフ氏の薬物中毒について独自に確認はできなかった。
サウジアラビア高官は、こうした説明は「ナンセンスであると同時に、(まったく)根拠がなく真実ではない」と述べている。
「ここで述べられている筋書きは、ハリウッド並みの完全なファンタジーだ」。この高官はロイターに対する声明でそう語り、ナエフ氏の薬物乱用疑惑については言及しなかった。
同高官によれば、ナエフ氏は国益のために解任されたのであり、どんな「圧力や屈辱」も味わっていないという。解任の理由は「機密事項」だと語った。
だが、状況に詳しい情報提供者によれば、国王は息子を王位継承者に昇格させることを決意し、ナエフ氏を排除するために彼の薬物問題を口実として利用したのだという。
3人の王室関係者、王族であるサウド家と関係のある4人のアラブ人当局者、そして中東地域における複数の外交関係者によれば、ナエフ氏は解任を命じられて驚いていたという。
「ナエフ氏にとっては、大きなショックだった」とナエフ氏に近いサウジ政界関係者は語る。「これは政変だ。彼は不意を突かれた」
情報提供者らによれば、ナエフ氏は衝動的な言動の多いムハンマド・ビン・サルマン氏に地位を奪われるとは予想もしていなかったという。ナエフ氏はサルマン氏について、イエメン紛争への対応や公務員の給与削減など多くの政策的過ちを犯してきたと考えていた。