皇太子が電撃交代、サウジ王室の「クーデター」舞台裏
今回の重大な権力掌握は、「MbS」とも呼ばれている32歳のムハンマド・ビン・サルマン新皇太子が圧倒的権力を手中に収め、王位継承を加速するよう意図した動きだったようにも見える。
王位継承のあかつきには、この若き皇太子は、いまや石油価格低迷、イエメン紛争、勢いづくイランとの対立、そして湾岸諸国の外交危機といった厳しい状況を迎えている王国を統治することになる。
ナエフ氏に近い関係筋は、同氏が健康問題を抱えていたことを認め、2009年にナエフ氏の宮殿において、過激派組織アルカイダの工作員が目前で自爆テロを図った後、病状は悪化していたという。
国王が薬物乱用を理由としてナエフ氏に辞任を求めたとされる会合については、サウジアラビアと関係の深いアラブ人情報筋からも、同様の説明を得た。
これらの情報筋によれば、ナエフ氏の体内には除去できない爆弾の破片が残っており、同氏は痛みを緩和するためモルヒネなどの薬剤に頼っていたという。ある情報筋は、ナエフ氏は近年、3回にわたってスイスの医療機関で治療を受けていたという。ロイターは独自の裏付けを得ることはできなかった。
宮廷革命
国王は、政治・安全保障評議会の会合前に動いた。
会合は午後11時に開始予定だったが、その数時間前にムハンマド・ビン・サルマン氏からの電話を受けたナエフ氏は、ありふれた連絡だ考えた。ナエフ氏に近い筋によれば、この電話でサルマン氏は、国王がナエフ氏との面会を求めていると伝えたという。
ナエフ氏に解任が告げられた謁見から数時間のうちに、サウド家の主要メンバーで構成される「忠誠委員会」は、国王名義による書簡を受け取った。
サルマン氏の宮廷顧問らによって作成された書簡には、ナエフ氏が(薬物中毒という)健康問題を抱えており、「2年間にわたり治療を受けるよう勧告してきたが聞き入れられなかった」と書かれていた。
「この危険な状況ゆえに、彼はその職務を解かれるべきであり、後任としてムハンマド・ビン・サルマン氏が任命される」──。ナエフ氏に近いサウジアラビアの情報提供者の要約によれば、書簡はそう告げていたという。
この書簡は「忠誠委員会」のメンバーに対して電話で読み上げられ、一方でナエフ氏は一晩中、室内で孤立した状態にあり、携帯電話を取り上げられ、側近との連絡を絶たれたという。内務省に属するエリート準軍事部隊から派遣される護衛たちも交代させられた。
「忠誠委員会」メンバーのもとには使者が送られ、承認の署名を集めた。34人のメンバーのうち、3人を除く全員が賛同した。こうして政変は成功した。