最新記事

英王室

母ダイアナの死と心の傷を乗り越えて ヘンリー王子独占インタビュー(後編)

2017年7月26日(水)17時30分
アンジェラ・レビン(ジャーナリスト)

henryinter05.jpg

歌手リアーナ(左)と彼女の出身地バルバドスでHIV検査 Chris Jackson/GETTY IMAGES

その後、ヘンリーは筆者に言った。「軍隊経験を共有しているからね。あの人たちは私とそっくりだ。みんな自分の実力を証明したい、認めてほしいと願っているんだ」

公務中の王子は快活で人当たりがいい。しかし独りになるとストレスやいら立ちを感じることもあるという。無理もない。確かに超特権的な暮らしをしてきたが、苦しいことも多かった。

両親の相性は悪く、11年間の「おとぎ話」のような結婚生活は「悪夢」に変わり、ついには離婚に至った。父は長年の愛人カミラ・パーカー・ボウルズの元に戻り、母は恋人を次々に替えた。事故死したときに同乗していたドディ・アルファイド(父親は当時ハロッズのオーナーだったモハマド・アルファイド)が最後の恋人となった。

「早く何かを成し遂げたい」

家族について聞かれると、ヘンリーは何の躊躇もなくエリザベス女王の「すごさ」をたたえ、亡き母のことは「ユーモアにあふれ、楽しい雰囲気をつくり、自分たち兄弟を守ろうとしてくれた」と懐かしんだ。

兄夫妻に関する言及はそれより少なく、父やカミラについてはほとんど触れなかった。父とカミラの関係がダイアナとその息子たちをどれほど苦しめたかは、今や誰もが知るところだ。

ダイアナ亡き後、誰もその穴を埋めることはできなかった。ヘンリーは精神的に頼る人がいないまま、大人になった。今、心の隙間を少しでも埋めようとしてくれているのはキャサリンだ。ヘンリーは彼女を「姉のような存在」と言う。兄夫婦の居宅に招かれると、キャサリンが手料理を振る舞ってくれるとか。

兄弟の性格はまるで違う。王室関係者によると「弟は感情を隠さず、兄は内向的で孤独を愛する。特殊な環境で育ち、早くに母親を亡くしたこともあって兄弟の絆は強い。しかし互いに依存することはない」。

「学業成績はウィリアムのほうが良かった。だが人付き合いはヘンリーのほうがずっと上。特に子供の扱いは天性のものだ」という説もある。

【参考記事】シャーロット王女は「公務のプロ」 監視カメラが捉えた初お辞儀

ヘンリーは実用的な器用さも誇りにしている。これも軍隊が性に合った理由の1つだ。07年末からひそかにアフガニスタンでの作戦に加わり、ヘルマンド州で戦闘機を攻撃目標に誘導する任務に就いた。しかし、その事実がメディアで報じられると帰国を命じられた。「非常に腹立たしかった」とヘンリー。「従軍は日常からの最高の逃避だった。すごい達成感があった」

12年には再びアフガニスタンの戦場に送られ、攻撃ヘリコプター「アパッチ」に乗り込んだ。「自分の技能を証明したかった。ただの王子じゃなくて、例えばアパッチを操縦できるとか」

15年の退役は不満だったが、そのエネルギーを「新たな自分探し」に向けた。それさえ見つかれば、自分の人生に王子という以上の価値を見いだせるはずだから。「世間の関心が自分に向けられている間に、それを最大限に生かして、早く何かを成し遂げたい」

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

[2017年7月 4日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、クルスク州の完全奪回表明 ウクライナは否定

ワールド

トランプ氏、ウクライナへの攻撃非難 対ロ「2次制裁

ワールド

イラン南部の港で大規模爆発、14人死亡 700人以

ビジネス

アングル:ドバイ「黄金の街」、金価格高騰で宝飾品需
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 9
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中