母ダイアナの死と心の傷を乗り越えて ヘンリー王子独占インタビュー(後編)
その後、ヘンリーは筆者に言った。「軍隊経験を共有しているからね。あの人たちは私とそっくりだ。みんな自分の実力を証明したい、認めてほしいと願っているんだ」
公務中の王子は快活で人当たりがいい。しかし独りになるとストレスやいら立ちを感じることもあるという。無理もない。確かに超特権的な暮らしをしてきたが、苦しいことも多かった。
両親の相性は悪く、11年間の「おとぎ話」のような結婚生活は「悪夢」に変わり、ついには離婚に至った。父は長年の愛人カミラ・パーカー・ボウルズの元に戻り、母は恋人を次々に替えた。事故死したときに同乗していたドディ・アルファイド(父親は当時ハロッズのオーナーだったモハマド・アルファイド)が最後の恋人となった。
「早く何かを成し遂げたい」
家族について聞かれると、ヘンリーは何の躊躇もなくエリザベス女王の「すごさ」をたたえ、亡き母のことは「ユーモアにあふれ、楽しい雰囲気をつくり、自分たち兄弟を守ろうとしてくれた」と懐かしんだ。
兄夫妻に関する言及はそれより少なく、父やカミラについてはほとんど触れなかった。父とカミラの関係がダイアナとその息子たちをどれほど苦しめたかは、今や誰もが知るところだ。
ダイアナ亡き後、誰もその穴を埋めることはできなかった。ヘンリーは精神的に頼る人がいないまま、大人になった。今、心の隙間を少しでも埋めようとしてくれているのはキャサリンだ。ヘンリーは彼女を「姉のような存在」と言う。兄夫婦の居宅に招かれると、キャサリンが手料理を振る舞ってくれるとか。
兄弟の性格はまるで違う。王室関係者によると「弟は感情を隠さず、兄は内向的で孤独を愛する。特殊な環境で育ち、早くに母親を亡くしたこともあって兄弟の絆は強い。しかし互いに依存することはない」。
「学業成績はウィリアムのほうが良かった。だが人付き合いはヘンリーのほうがずっと上。特に子供の扱いは天性のものだ」という説もある。
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ヘンリーは実用的な器用さも誇りにしている。これも軍隊が性に合った理由の1つだ。07年末からひそかにアフガニスタンでの作戦に加わり、ヘルマンド州で戦闘機を攻撃目標に誘導する任務に就いた。しかし、その事実がメディアで報じられると帰国を命じられた。「非常に腹立たしかった」とヘンリー。「従軍は日常からの最高の逃避だった。すごい達成感があった」
12年には再びアフガニスタンの戦場に送られ、攻撃ヘリコプター「アパッチ」に乗り込んだ。「自分の技能を証明したかった。ただの王子じゃなくて、例えばアパッチを操縦できるとか」
15年の退役は不満だったが、そのエネルギーを「新たな自分探し」に向けた。それさえ見つかれば、自分の人生に王子という以上の価値を見いだせるはずだから。「世間の関心が自分に向けられている間に、それを最大限に生かして、早く何かを成し遂げたい」
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[2017年7月 4日号掲載]