最新記事

中国

くまのプーさんと習近平----中国当局が削除する理由と背景

2017年7月20日(木)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

習近平のこの体型がくまのプーさんを連想させた。右は虎のティガーにされたオバマ元米大統領 Kevin Lamarque-REUTERS

中国のネット空間ではくまのプーさんが検閲対象になり削除されている。習近平になぞらえたからだ。なぜそれが罪になり削除対象になるのか。習近平政権になってからの政治背景と現状を分析する。

習近平をくまのプーさんになぞらえたネットユーザー

まず、くまのプーさんと習近平の関係に関する経緯を見てみよう。

最初にネットに現れたのは、習近平政権になってからの初の米中首脳会談。2013年6月にカリフォルニアのアネンバーグ邸で「習近平×オバマ」が二人だけで散歩をしていたときの写真に対する比喩だ。

一連の「くまのプーさん比喩」が載っている「このページ」をご覧いただきたい。

最初の絵は「習近平国家主席がくまのプーさん」に、「当時のオバマ大統領が虎のティガー」になぞられている。非常によく似ていて、実にうまい!

ところが中国では「虎は大物」を表す。

オバマさんが「大物」で、「中国で最高の威厳を持っていなければならない最高の大物」でなければならない習近平が、「のんきで、(人はいいが)間抜けなプーさんに」比喩されているなどということは、許されないことだった。

つぎに現れたのは2014年11月の日中首脳会談。

このときは習近平がくまのプーさんであるのに対して、安倍首相が「ロバのイーヨー」になぞらえられている(3番目の絵)。安倍さんの眉毛がやや両下がり気味なところなど、よく特徴を捉えていて、これもうまい。

中国当局の最も大きな怒りを買ったのは、2番目にある2015年9月3日の軍事パレードの時の比喩だ。

この日は抗日戦争勝利記念日で、建国記念日である国慶節(10月1日)以外で軍事パレードを行うのは中国建国後初めてのことだった。習近平は中央軍事委員会主席、そして最高総帥(そうすい)として、晴れある閲兵式を行なったつもりだったのである。

それが「おもちゃの車に乗った、おもちゃのくまのプーさん」に置き換えられたのだ。
中国が誇った武器はおもちゃに置き換えられ、そのトップにいる習近平は、言うなら「虚像」として揶揄されたに等しい。

ここまで「バカにされて」なるものか!

当局の怒りようは尋常ではなかった。激しいネット検閲を行ない、次から次へと削除されていったものだ。

これがこれまでの経緯である。

注目されたのは欧米メディアの報道

今般、突如、「くまのプーさんと習近平」の関係が注目されるようになったのは、フィナンシャル・タイムズ、ニューヨーク・タイムズ、あるいはCNNなどが報道したためだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ショルツ独首相、2期目出馬へ ピストリウス国防相が

ワールド

米共和強硬派ゲーツ氏、司法長官の指名辞退 買春疑惑

ビジネス

車載電池のスウェーデン・ノースボルト、米で破産申請

ビジネス

自動車大手、トランプ氏にEV税控除維持と自動運転促
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中