最新記事

イスラム過激派

比ドゥテルテ大統領、マラウィ奪回へISISと取引を用意 後に撤回

2017年7月7日(金)10時08分

 取材に応じるイスラム教指導者アガハン・シャリーフ氏。カガヤン・デ・オロで3日撮影(2017年 ロイター/Martin Petty)

フィリピンのドゥテルテ大統領が、「イスラム国(IS)」系武装勢力が南部ミンダナオ島のマラウィを占拠した直後に、武装勢力側と取引する用意を進めたものの、説明なく取りやめていたことが分かった。交渉に関わった仲介者が明らかにした。

著名イスラム教指導者アガハン・シャリーフ氏はロイターに対し、イスラム系武装勢力のマウテグループが5月23日にマラウィの一部を占拠して住民数百人を人質にとった直後に、ドゥテルテ大統領側近から接触があり、マウテ指導者との人脈を使って、水面下での交渉を始めるよう要請されたと述べた。

事情に詳しいマラウィの消息筋2人も、大統領が水面下でマウテグループを率いるオマルとアブドゥラのマウテ兄弟との接触を試みていたと認めた。

しかしドゥテルテ大統領が5月31日に行った演説で「テロリストとは対話しない」と宣言すると、プロセスが中断されたという。

なぜドゥテルテ大統領が急に翻意したかは、明らかになっていない。この5日前のテレビ演説で、大統領は武装勢力に「まだ対話によって解決することができる」と呼びかけた上で、もし説得できなければ「仕方がない。戦うだけだ」と述べていた。

「大統領の問題点は、すぐに気が変わることだ」と、長年情勢が不安定な南部ミンダナオ島で数々の和平協議に関わってきた聖職者のシャリーフ氏は言った。「もうテロリストとは対話しないと大統領が宣言し、われわれの交渉は中断した」

ドゥテルテ大統領の和平交渉特使ヘスス・ドゥレーザ氏は、水面下の交渉については何も承知していないと述べた。ヘルモヘネス・エスペロン国家安全保障会議議長は、大統領がマウテグループに接触した可能性は低いと話す。「なぜ彼がテロリストと話すのだ」と、エスペロン氏は言った。

表向きの強硬発言や、武装勢力を壊滅させるとの頻繁な公約にも関わらず、ドゥテルテ大統領は、和平の仲介者として知られている。情勢が不安定な人口2200万人のミンダナオ島で、ダバオ市長を22年務めるなかで、分離派やマルクス主義派の反乱勢力に対応した実績がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中