欧州の風力発電は正念場へ 生き残り賭けた300mの超巨大風車
技術的ハードル
最大の技術的ハードルは、海底に基盤を固定する風車構造に過度な負荷を与えることなく、ブレードを長く伸ばすことにある。ブレードの長さは現在稼働する最も強力な風車のそれよりも約50メートル長くなる。
常にさまざまな強さの風にさらされるブレードの製造は、カーボンやガラス繊維製のレイヤーを接着して正確な温度で乾燥させなければならず、極めて複雑だ。
風力発電の先端技術を開発してきたデンマークの国立研究機関、デンマーク工科大学(DTU)ウィンド・エネルギーは、炭素繊維の量を増やして、長大なブレードの重量を抑える研究をしている。乱気流でもブレードが壊れないよう、航空機の翼のフラップ部分に似た構造を採用したブレードも設計した。
「一般の人も、航空機やヘリコプターの翼を計算するのが複雑だと理解している。風車も同じように複雑で、同じ技術を使っている」と同研究所のフレミング・ラスムセン氏は話す。
採算性の問題
巨大風車が稼働しても、事業者が補助金なしに利益を出すためには、他の条件を満たす必要がある。重要なのは、収益が投資コストを上回るレベルまで、電力価格を引き上げることだ。
バーンスタインの研究者は、現在の電力価格予測に基づけば、事業者が補助金ゼロで事業収支をトントンまで持ち込むには、設備投資を6割程度カットする必要があると試算する。一方で、風車サイズを7メガワット級から14メガワット級に大型化すれば、設備投資は4割程度削減できるとしている。
また、現在のメガワット時当たり30ユーロの電力価格は、2023年までに5─6ユーロ値上げされるとみている。
「補助金なしの事業で採算性を取るには、コスト削減と電力価格引き上げの両方が必要だ」と研究者は指摘する。
(Stine Jacobsen記者, Vera Eckert記者、翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)
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