欧州の風力発電は正念場へ 生き残り賭けた300mの超巨大風車
だが、巨大風車で全てが解決する保障はない。
技術面では、非常に巨大な風車タワーを建設し、強力な風の力に耐えられる、スリムで軽いブレードと呼ばれる羽を開発しなければならない。経済面においても、巨大風車が発電効率を改善したとしても、補助金ゼロでプロジェクトの採算が取れるかを疑問視する専門家もいる。
巨大風車のプロトタイプ
それでも、発電事業者は、新たな技術をあてにしている。
スウェーデンのバッテンフォールの海外事業を統轄するMichael Simmelsgaard氏は、10メガワット風車の登場は、「多くの人が想像するより早く実現する」と予想する。10メガワット級の風車は、9000世帯に電力供給できる。
ドン・エネルギーの風力発電を担当するサミュエル・ロイポルト氏は、今月ロンドンで開かれた洋上風力発電の国際会議で、「13─15メガワットの風車を導入できる」と発言。これまで10メガワット級の風車については議論があったが、それを上回る大きさの出力について業界幹部が公の場で言及したのは初めてだった。
独EnBWも、巨大風車に関心を寄せている。同社の発電ポートフォリオ開発を担当するDirk Guesewell氏は、「効率を上げるには、大きさが重要だ。回転翼が大きければ、同じキャパシティの電力を発電するのに風車の数が少なくて済む」と話す。
ドイツの風力発電機大手センビオンは、出力10メガワット超の風車を開発していることを明らかにした。まだ設計段階だが、すでに事業者に提案しており、担当者は今後5年以内に設置が始まる見込みだと語る。
シーメンス・ガメサに協力している技術者によると、同社は、来年までに巨大風車のプロトタイプを建設するという。大手風車メーカー数社と働く別の技術者によると、巨大風車の設計は業界全体で、ほぼ完成しており、プロトタイプの製作がもうすぐ始まるところだという。シーメンス・ガメサはコメントの求めに応じなかった。