ロシア疑惑、「裏切りの告発証言」引き出す腕利き検察官を抜擢
オバマ政権下で法律顧問を務めたキャサリン・ルエムラー氏は、証言を確保するため、ワイスマン氏は他の検察官なら取らないかもしれないリスクを取ることに前向きとの見方を示した。
ルエムラー氏は、2001年に破綻したエンロンの巨額粉飾決算を捜査する司法省のチームで、ワイスマン氏と共に働いた経験がある。
ルエムラー氏によれば、当時協力に同意せず、すでに有罪を認めていたエンロンの元財務担当ベン・グリサン被告が、証言するだろうというワイスマン氏の勘が働いたという。そこでワイスマン氏は、同被告を刑務所から大陪審に引っ張り出してきた。
負けることを恐れない
他の検察官であれば、グリサン被告の証言が自分たちが組み立てた事件の構図と矛盾する可能性を恐れたかもしれないと、ルエムラー氏は指摘する。だが、このエンロン元幹部が重要な証言を行ったことで、ワイスマン氏の賭けは功を奏した。
「彼(ワイスマン氏)は負けることを恐れない。これは、まれに見る資質だ」とルエムラー氏は語った。
ワイスマン氏はまた、エンロン事件で検察側の重要な証人となった同社のアンドリュー・ファストウ最高財務責任者(CFO)の弁護団との長期にわたる交渉の先頭に立ち、同じくエンロン社員だったファストウ氏の妻が不正取引で起訴されたという事実から交渉を有利に進めた。
2人とも罪を認め、ファストウ被告はエンロンのジェフリー・スキリング最高経営責任者(CEO)に不利な証言を行った。同CEOは2006年、有罪判決を受けた。
ファストウ氏はコメントを拒否。グリサン氏からもコメントを得られなかった。モラー特別検察官の代理人とトランプ大統領の弁護団もコメントを差し控えた。
ワイスマン氏の強硬姿勢は検察の越権行為につながりかねないとの批判の声も上がっていた。エンロン事件を巡る多くの有罪判決は控訴審で覆された。スキリング氏に下された24年の刑期も、のちに10年減刑されている。