最新記事

投資

仮想通貨が急騰、ビットコインを上回る人気銘柄も続々登場

2017年6月13日(火)15時22分
緒方欽一(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

利用可能な店舗が増え、ビットコインの普及は進んでいるが、今の価格は行き過ぎか Arnd Wiegmann-REUTERS

暗号技術を活用し、電子データに価値を持たせた「仮想通貨」の価格が急騰している。草分けで代表格のビットコインだけでなく、ほかの通貨も大きく上昇している点が今回の大相場の特徴だ。

業界関係者が参照しているコインマーケットキャップのデータによると、ビットコインは3月末以降の2カ月余りで、対米ドルでの価格が2倍以上にハネ上がった。時価総額は3月26日時点で157億ドル(1.7兆円)だったのが5月30日時点で376億ドル(4.1兆円)にまで膨らんだ。

toyokeizai170613-2.png

800種類ほどある仮想通貨全体の時価総額は同期間で233億ドル(2.5兆円)から796億ドル(8.8兆円)に増えたが、ビットコインが全体の時価総額に占める比率は7割弱から5割弱に下がった。

時価総額トップ10の通貨を見ても、2位のイーサリアムが約4倍、3位のリップルが20倍以上とビットコインを超える上昇となっている。

toyokeizai170613-3.png

複数の要因で新たな投資家層が取引に参入

最近の価格急騰はなぜ起きたのか。業界関係者の話を総合すると、いくつかの要因があるようだ。

国内の仮想通貨取引所の一つ、ビットバンクを運営する廣末紀之CEO(最高経営責任者)は時価総額6位のライトコインで起きた動きに注目する。それは「セグウィット」という新技術をめぐるものだ。

ビットコインは現状では、クレジットカード決済のように大量に発生する取引データを処理することが不得手だ。その取引処理能力を上げる解決策として出てきたのが、セグウィットだった。これを採用するか否か、ビットコイン陣営では議論が紛糾した。

ところが、ビットコイン陣営を尻目に、4月にはライトコインなどが先んじてセグウィットの採用を決めた。これを機に、ビットコインを超える存在となりうるとの期待が生じ、ビットコイン以外の通貨も買われたと廣末氏は見る。

期待先行のイーサリアム、日本人が買ったリップル

一方、時価総額2位のイーサリアムと同3位のリップルの動きから価格上昇を説明するのは、仮想通貨の技術面にも詳しい日本デジタルマネー協会の本間善實代表理事だ。

この2つの通貨に共通するのは、「技術面から見た実力と先行する期待との乖離が大きい」(本間氏)ことだ。

イーサリアムは、仮想通貨を含む複数のアプリを動かすプラットフォームだと理解しておけばいい。ブロックチェーン技術が持つ改ざん防止などの特徴を生かし、不動産登記といった幅広い分野で利用される可能性が高いとされる。

今年2月、JPモルガン・チェースやマイクロソフトなど欧米企業が、標準的な仕様づくりを目指す企業連合を立ち上げた。この発表が期待をいっそう高め、価格上昇につながったようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アクティビスト、世界で動きが活発化 第1四半期は米

ワールド

フィンランドも対人地雷禁止条約離脱へ、ロシアの脅威

ワールド

米USTR、インドの貿易障壁に懸念 輸入要件「煩雑

ワールド

米議会上院の調査小委員会、メタの中国市場参入問題を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中