即興劇の女優が教えるクリエイティビティの5原則
原則4:ゴミくずから創造する
同僚が意地の悪いメールの返事をよこしてきた。新しいクライアントへのプレゼンの途中で、最後のスライドに載せたクライアントの企業ロゴが、一昨日にプレゼンした別の企業のものになっていることに気がついた。とてつもなく優秀な部下を昇進させようとしたら、グーグルに転職してしまった......。
私たちは日々、こんな山ほどのゴミくず(crap)と、何とか折り合いをつけながら仕事をしている。イライラして椅子をぶん投げるのはやめよう。ゴミくずは創造のためのインスピレーションを与えてくれる可能性があるのだから。
確かに「創造」と言った。私は本気だ:
今度仕事でイラついたり、頭にくることが起きたら、そのことについて詩を書いたり、マンガに描いてみよう。歌を作ってもいい。
「うわー!」と言う:
典型的なゴミくずに出くわしたら、こんなふうに叫んでみよう。「うわー! これは素晴らしい贈り物だ! これをもとに新しいことを考えられる」。意地汚いメールを連発する前に、一息つこう。電話をかけるか、相手のいる部署まで言って、こう言うのだ。「これまでのやり取りはNGテイクだ。さあ、対話の"テイク2"を始めよう」。ゴミくずのようなメールのやり取りを、"演技"を変えるチャンスにするのだ。
【参考記事】「アイデアは既存の要素の新しい組み合わせ」とヤングは言った
原則5:即興で人生を演じる
こんなふうに考えたことはないだろうか。私たちは常に即興で人生を演じているのだ、と。ただし、脚本を作る、あるいは自然に脚本ができることはある。小さなことでは、通勤のルート。もっと大事な問題としては、自分のリーダーシップのスタイルなどだ。こうしたことは、最初の一度だけは即興で行わなければならないが、すぐに「常にある」ものとなる。
だが、ここであえて脚本を無視して即興を続けたらどうだろう。そうすれば、あなたは、自分は誰で、何をすべきか、それをどのようにすべきか、どのように感じ、ものを見るのか、などを常に発見し続けることができる。私が即興演技(インプロ)をする時に決めていることを紹介しよう。
「はい。そして」と言う:
これは、あなたと、あなたの即興演技のパートナーとの関係を作る上での大原則だ。あなたは相手の言葉を受け入れ、それに何か建設的なことを付け加えなければならない。「はい、しかし」とも「いいえ、しかし」とも言ってはならない。来週1週間、いくつかの対話の中でこれを試してみてほしい。
他人を良く見えるようにする:
即興演技の伝道者であるデル・クローズは、「私たちがお互いを天才で、詩人で、芸術家であるかのように扱えば、それらになれるチャンスが訪れる」と語っている。あなたは、他人を重要で価値があるとみなす言葉や行動を選ぶべきだ。まずは誰かが何かを言った時に、「あなたが言ったことの中で私が好きなのは~」とか、「○○さんの言ったことで重要だと思うのは~」などと口にすることから始めてみよう。
変化球を歓迎する:
即興演技者は、意外性や異常性、「ヘンテコ」が大好きだ。それは閃光のようにクリエイティビティを輝かせる。それらを歓迎しよう。変化球は、考え方を既定の路線から外れさせ、クリエイティビティをもたらしてくれる。だから、あなた自身も変化球を投げていこう。
洞窟を探検する:
近代即興劇の創始者と言われるキース・ジョンストンは、「"イエス"と言う者は、冒険を楽しむことができるだろう。"ノー"と言う者は、安全圏を確保することしかできない」と著書に書いている。人生やビジネスのあらゆる場面において即興演技を続けるならば、あなたの前にはいつでも、次に何をすべきかの選択肢が存在する。安全で心地よい選択肢もある。だが、馴染みがなく、異常で、恐怖さえ感じさせる選択肢もある。後者に「イエス」と言おう。
[執筆者]
キャシー・サリット Cathy Salit
リーダー養成プログラムの提供や企業の組織改革サポートを手掛けるパフォーマンス・オブ・ア・ライフタイム社CEOで、歌手、女優、即興劇チームの一員としても活躍。著書に『壁を破る力 パフォーマンス・ブレークスルー』(邦訳・徳間書店)がある。
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