エイリアンとの対話を描く『メッセージ』は、美しく複雑な傑作
言語学者のルイーズは米軍の依頼でエイリアンの言葉の解読に乗り出す
<音と映像の「彫刻家」ドゥニ・ビルヌーブが、未知の存在との遭遇を卓越した手腕でみせる>
ドゥニ・ビルヌーブ監督の『メッセージ』は、最高に壮大な――そして最高に悲しく、複雑な――宇宙映画だ。クリストファー・ノーラン監督の『インターステラー』で五感を揺さぶられる経験を楽しめた観客は、この映画で再び脳ミソをかき回される経験を堪能できるだろう。
ストーリーはアメリカ、ロシア、日本、中国、パキスタンなど、地球上の12カ所に宇宙船が飛来するところから始まる。宇宙船に乗ったエイリアンたちの目的は何なのか。
この問いの答えを見いだす役割は、言語学者のルイーズ・バンクス(エイミー・アダムス)に課せられる。宇宙船の飛来により大学が休講になった日、フォレスト・ウィテカー演じる陸軍大佐が研究室を訪ね、彼女に協力を求めたのだ。
ルイーズは、宇宙船の着陸地点の1つであるモンタナ州の広大な草原までヘリコプターで運ばれる。彼女は仲間と共にオレンジ色の防護服を着込むと、早速調査を始める。クジラの歌と波の音の中間のような音に耳を澄まし、エイリアンが吹き出す煙のようなものが作る図形――これが彼らの文字だ――を解読しようとする。
この接触の後、ルイーズは手の震えが止まらなくなる。『メッセージ』はスティーブン・スピルバーグ監督の『未知との遭遇』など過去の宇宙映画を踏襲している面も多い。だがエイリアンとの遭遇がPTSD(心的外傷後ストレス障害)をもたらす可能性を描いた作品はおそらく初めてだろう。
【参考記事】『ブレードランナー』続編抜擢、注目監督のSF映画:『メッセージ』
型にはまり過ぎの面も?
『メッセージ』は、アダムスのファンにとっては満足できる作品だ。出世作になった『ジューンバグ』に始まり、ディズニー映画の『魔法にかけられて』やポール・トーマス・アンダーソン監督の『ザ・マスター』に至るまで、アダムスは人を疑わない純粋な女性を好演してきた。今回演じる言語学者ルイーズもそういうタイプの役だ。