性的欲望をかきたてるものは人によってこんなに違う
「ルール34」がそれほど多くの人の共感を呼んでいるのはなぜだろうか? ウェブサイトめぐりに時間を割く人なら、だれもがピーターの言葉を事実だと思うからだ。「Erotic Falconry」には、捕食性の鳥と一緒にいるエロチックな姿の女性の写真が載っている。「Snarry.net」にはハリー・ポッターとスネイプ先生のエロ物語が掲載され、「Looner Vision」では、風船と戯れて欲情を催している人たちの動画が紹介されている。コメディアンのリチャード・ジェニはこう語っている。「インターネットは人と人とを引き合わせる。どんなに変わった性嗜好の持ち主だって、ネットの世界なら、いくらでも仲間が見つかるよ。キーボードに『発情しているヤギとセックスしている人を探せ』と打ち込んでごらん。コンピュータはこう指示するから。『ヤギの種類を特定してください』」
ワールドワイドウェブのサービスが始まった1991年には、アメリカで出版されていたアダルト雑誌は90誌ほどしかなく、ニューススタンド(売店)でも、10誌以上を置いているところはほとんどなかった。それからわずか6年後の1997年には、ネット上に900ものポルノサイトができていた。今では、有害サイトをブロックするフィルタリングソフト「サイバーシッター」が、250万のアダルトサイトをブロックしている。ブロードウェイミュージカル『アベニューQ』で、あやつり人形が「ネットはポルノのためにある」と歌っているが、まさしくその通りなのだ。
目で見るポルノは、ほとんどが男性を対象としている。しかし、インターネットを使って、安心して官能的な楽しみを得ている女性も急速に増えている。洋の東西を問わず、多くの国々で、性に関係したオンライン活動がごく当たり前のものになり、男性も女性も、ほとんどの人が性的目的でインターネットを使っている。人類史上、「性」がこれほど飛躍的に進歩したことがあっただろうか? 現代人は、ポルノ動画サイトに行けば、19世紀ビクトリア朝時代のもっとも好色な男が一生の間に見るヌードの数よりさらに多くのヌードを、たった1分間で見ることができる。おまけに、もっと画期的な進歩もある。現代人は、他人とまったく接触しなくても、ポルノを手に入れられるようになったのだ。
ひと昔前は、レンタルビデオ屋のアダルトコーナーをウロウロするなんて、とても恥ずかしくてできなかった女性たちも、今では、人に知られずに安心して官能的な楽しみを追い求めることができる。ひと昔前は、保守的な地域社会のなかで孤立していたゲイたちも、今では、座ったままで刺激的なコンテンツをいくらでも見て回ることができる。携帯電話を使って、電車のなかでポルノを見ることもできるし、オフィスの洗面所でこっそり見ることもできる。世界の何億人もの人々が、ちょっと頭を使い、クリックし、キーボードを叩くだけで、もっとも人に知られたくない官能的欲望を、匿名のまま、思う存分満たすことができるのだ。