最新記事

アメリカ社会

アーカンソー州「駆け込み死刑」論争で注目される鎮静剤ミダゾラム

2017年4月19日(水)13時20分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

死刑そのものへの疑問

今月予定されていた死刑のうち、2人はすでに別の手続きを踏んで阻止されていた。連邦地裁は4月6日、ジェイソン・マックギ―の刑執行を中止し、さらに14日、ブルース・ワードにも同様の措置を取った。

CNNによれば、17日に死刑執行予定だったブルースは1990年に女性を絞殺した罪で収監されているが、弁護士は「ブルースに責任能力は無い」として死刑が適さないと主張してきた。ハーバード・ロースクールはレポートの中で、この8人の死刑囚のうちワードを含む6人が、精神的に何らかの異常があると指摘している。

【参考記事】インドの性犯罪者が野放しになる訳

論争は今後も続く

15日の執行差し止め命令を受けてアーカンソー州のレズリー・ラトレッジ検事総長は、判決を不服とし上訴する意向を示している。背景には、死刑執行までに「何十年も待っていた」という被害者家族の心理的苦痛もある。

一方で同連邦地裁のクリスティン・ベイカー裁判官は「ミダゾラムが死刑囚に適切に効かない場合、死ぬ前に重度の痛みを被る」として、囚人側が死刑の執行方法について争うことは可能だとしている。

法、製薬業界、被害者心理という複雑な問題が絡み合うテーマだけに、今後も論争は続きそうだ。

【参考記事】同性愛の客室乗務員がなぜ、同性愛は死刑のイランに飛ばなければならないのか

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

NZ企業信頼感、1月は低下 コスト下げ止まりの兆し

ワールド

訂正:旅客機が米軍ヘリと衝突、川に墜落 首都ワシン

ワールド

フィリピンGDP、第4四半期は前年比+5.2%で横

ビジネス

トヨタの24年世界販売3.7%減、過去最高の海外寄
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 3
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? 専門家たちの見解
  • 4
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 7
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 8
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 9
    女性が愛おしげになでていたのは「白い犬」ではなく.…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 9
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 7
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 8
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中