中国とノルウェーの関係正常化、鍵は「ノーベル平和賞」と「養殖サーモン」
「中国を批判できなくなったノルウェー、人権問題はタブーってどうなの」という目線
・DN紙(4/6)
オスロ大学アジア専門家Harald Bockman氏「ノルウェーが中国を批判できなくなったと指摘する声もある。政府がサインした文書は、ストルテンベルグ前政権が(劉暁波に)平和賞を授与したことは間違いであったと認めたことになる。ソルベルグ首相は否定するだろうが、事実上の謝罪に近い」
・Nationen 紙(4/11付)
投獄された平和賞受賞者はテーマにせず。「ノルウェーは平和賞授与がどれだけの結果を招き入れるか身にしみたことでしょう。ノルウェーと中国に対するダメージがあまりにも大きいため、ノルウェーはもう二度と同じことはしないでしょうね」と両国のビジネス関係の鍵を握る一人Zhaon Long氏は語る。
・Dagsavisen紙(4/8付)
同紙の開発編集者ヨハンセン氏による社説
ブレンデ外務大臣が唯一できたことといえば、中国を批判しないと約束すること。そうすると、ほら!冷え切っていた6年間にあたたかい風が吹いてきました。ノルウェーがサインした声明を要約するとこうです。中国の核となる関心ごとを弱体化させるようなことには批判も支援もしない。両国の関係が崩れることを避けるためには、なんだってすると。首相は人権において「いずれ取り組む」と言います。「今ではない」と。しかし、首相も外務大臣も、次がいつかは口にはしません。
人権問題の批判に対してソルベルグ首相はNTB通信局にこう答える。「発言や意思表示は自由であるべきだとは思います。しかし、同時にノルウェーとしての仕事はただ抗議するだけではなく、人権において話すことができるふさわしい状況を探すことです」。
劉暁波が授賞式に来たらどうする?
今回、中国がノルウェーと仲直りをする姿勢を見せた背景には、米国・トランプ大統領との関係に危機感を示したためと多くのメディアは指摘。
石油価格が落下し、「第二の石油」となる国を支える資源を探すノルウェー。EU非加盟であることから国の守りは固める必要があり、ロシアとの関係は悪化する一方。今、中国とのつながりを強化することで損はしない。
とはいえ、ノルウェーの政治家たちにとって、将来大きな悩みの種となるのは、劉暁波氏が釈放された時だろう。劉暁波氏は現地で平和賞を授与していないため、ミャンマーのアウン・サン・スー・チー氏のように賞を受け取りにノルウェーを訪れることは可能だ。
しかしその時に、恒例となっている王室一家の授与式参加、首相たちとの公式の面会は実現するのだろうか?ノーベル平和賞がノルウェーに与える影響は良くも悪くも計り知れない。
Photo&Text: Asaki Abumi
[執筆者]
鐙麻樹(ノルウェー在住 ジャーナリスト&写真家)
オスロ在住ジャーナリスト、フォトグラファー。上智大学フランス語学科08年卒業。オスロ大学でメディア学学士号、同大学大学院でメディア学修士号修得(副専攻:ジェンダー平等学)。日本のメディア向けに取材、撮影、執筆を行う。ノルウェー政治・選挙、若者の政治参加、観光、文化、暮らしなどの情報を数々の媒体に寄稿。オーストラリア、フランスにも滞在経歴があり、英語、フランス語、ノルウェー語、スウェーデン語、デンマーク語で取材をこなす。海外ニュース翻訳・リサーチ、通訳業務など幅広く活動。『ことりっぷ海外版 北欧』オスロ担当、「地球の歩き方 オスロ特派員ブログ」、「All Aboutノルウェーガイド」でも連載中。記事および写真についてのお問い合わせはこちらへ