最新記事

ラグジュアリー

スイスの高級腕時計ブランドにグレーマーケットは必要悪か

2017年4月17日(月)08時29分

4月12日、スイスの腕時計メーカーは「グレーマーケット(灰色市場)」に対し、大幅な値引きは高級感を損ねると嫌悪感を露わにするが、各ブランドは密かにグレーマーケット業者との連携を開始せざるを得なくなっている。写真はベーゼルの展示会でのパテック・フィリップのディスプレー。3月撮影(2017年 ロイター/Arnd Wiegmann)

ダイヤモンドを散りばめたロレックスの腕時計は定価3万4000ドル(約370万円)が4割引きに、そしてオメガの「スピードマスター・ムーンフェイズ」は1万ドルを切ることも──。

それでも大半の人には手の届かない価格だが、まん延するこうした商売は、高級腕時計メーカーが現在置かれている複雑な窮状を浮き彫りにしている。

高級腕時計の売り上げが減少するなか、ますます多くの売れ残り商品が、スイスが独占する業界によって慎重にコントロールされた公式販売ネットワークから、オンラインショップへと流れ込んでいる。こうしたルートでは、大幅な割引価格で販売されることが多い。

こうした「グレーマーケット(灰色市場)」に対し、スイスの腕時計メーカーは嫌悪感を露わにする。大幅な値引きは、慎重に築かれた高級感のオーラを損ね、正規価格で売ることが困難になると訴える。

「高級品部門においては、評判、夢、価格といった幻想が崩れてしまうと、信頼も失われてしまう。高級品にとって、それは緩慢な死を意味する」。LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)(LVMH.PA)の腕時計部門を率いるジャン・クロード・ビバー氏はそう語る。

先月バーゼルで開催されたフェアでロイターのインタビューに応じたビバー氏は、グレーマーケットを「業界のガン」と呼んだ。

しかし、中国の爆買い需要が突然の終焉を迎えたことで、各ブランドは密かにグレーマーケット業者との連携を開始せざるを得なくなっている。販売協力もあるが、多くは非公式の販売業者に対する一定の影響力を確保するためだ、と販売業者や業界幹部はロイターに語った。

「グレーマーケットに出回る腕時計の供給元はたくさんある。売れ行きの悪い商品を処分したい公式の販売代理店や、輸入代理店、そしてブランド本体の場合さえある」とある業界幹部は匿名を条件に語った。

場合によっては、グレーマーケットの販売業者がブランド側に協力し、新製品をセール対象から外したり、値引き幅を抑えたりもする、と同幹部は語る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

加藤財務相、「為替水準の目標」話題にならず 米財務

ワールド

米との鉱物資源協定、週内署名は「絶対ない」=ウクラ

ワールド

ロシア、キーウ攻撃に北朝鮮製ミサイル使用の可能性=

ワールド

トランプ氏「米中が24日朝に会合」、関税巡り 中国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 2
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考えるのはなぜか
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 5
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    「地球外生命体の最強証拠」? 惑星K2-18bで発見「生…
  • 8
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 9
    謎に包まれた7世紀の古戦場...正確な場所を突き止め…
  • 10
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中