最新記事

ドイツ選挙

相次ぐユダヤ人差別発言でドイツの極右政党AfDも終わった?

2017年4月7日(金)18時08分
ジェイソン・ルミエール

党員のユダヤ人差別で支持率ガタ落ち、極右AfDのペトリー党首 Axel Schmidt-REUTERS

<反移民感情から支持を集めてきたドイツの極右政党AfDが、反ユダヤ主義と非難を浴び支持率急落。3月に極右ポピュリズム政党が総選挙で敗退したオランダの後に続くか?>

ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」のフラウケ・ペトリー党首は、同党がユダヤ人を差別しているという批判に対してAfDはユダヤ人の数少ない守り手だと強弁した。世界ユダヤ人会議(WJC)のロナルド・ローダー会長がAfDを「ドイツの恥」と批判したことに応えたもの。

ペトリーは4日発行の独ウェルト紙のインタビューで、「違法かつ反ユダヤ的な移民が増えているドイツにおいて、AfDはユダヤ人の暮らしを保証する数少ない組織のひとつだ」と語ったのだ。

AfDは9月の連邦議会選挙に先立って人気を集め、支持率も一時は15%まで伸びてアンゲラ・メルケル首相のキリスト教民主同盟(CDU)など既成政党を慌てさせた。しかし、一部の党員が反ユダヤ主義的な言動で非難を浴びたことが影響し、ここ数週間は支持率も10%を下回っている。

【参考記事】オランダ総選挙、ポピュリズム政党敗退の裏側に見えるもの
【参考記事】メルケルを脅かす反移民政党が選挙で大躍進

党のテューリンゲン州代表であるビョルン・ヘッケ州議会議員は、ベルリンのホロコースト慰霊碑を「恥の記念碑」だとし、ウォールストリート・ジャーナル紙のインタビューでは、ナチスの総統アドルフ・ヒトラーは「絶対悪」ではないと発言した。「ヒトラーを絶対悪と呼ぶのは大きな間違いだ。歴史には白も黒もない」

ローダーはこれらの発言を「ショッキングでおぞましい」と形容し、「AfDが極右におもねっているのは明白だ。彼らは火遊びをしている」と主張した。

「ホロコーストは注目されすぎ」

ペトリーはヘッケを党から追放しようと試みたが、最新のインタビューではなぜか彼の擁護に転じた。第二次大戦について、より「広い視野からの」解釈を求めたのだ。

「AfDはもちろん、ホロコーストの歴史を重く受け止めている。だが、ベルリンのホロコースト慰霊碑には社会的に賛否両論もあり、それがすべてとは言えない」

ドイツのユダヤ人中央評議会の前代表シャルロッテ・クノブロッホは、ラジオ局ドイチェ・ヴェレで放送されたペトリー発言を批判する。AfDは「公然と、かつ姑息に、人種差別的、排他的、反ユダヤ主義的な発言をし、歴史を改ざんし、ホロコーストを相対化あるいは否定し、ネオナチにすり寄っている」と述べた。

やはりAfD党員でバーデン・ビュルテンベルク州のウォルフガング・ゲデオン下院議員は昨年、ホロコーストはドイツで注目されすぎている、と発言。同党の地域会長であるエレナ・ルーンは2月、AfDのグループチャット内にヒトラーの写真を掲げ、「1945年から会いたい」「アドルフ、お願いだから連絡して!ドイツにはあなたが必要!」などのコメントを投稿した。

ドイツでは2015年にユダヤ人に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)が200%増加、その後も急増している。

AfDはまたイスラム教徒の移民にも反対だ。イスラム教徒に関するマニフェストの表題は「イスラムはドイツの一部ではない」となっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ・メディア、「NYSEテキサス」上場を計画

ビジネス

独CPI、3月速報は+2.3% 伸び鈍化で追加利下

ワールド

ロシア、米との協力継続 週内の首脳電話会談の予定な

ワールド

ミャンマー地震、がれきから女性救出 死者2000人
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    「関税ショック」で米経済にスタグフレーションの兆…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中