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トルコで警官9000人が停職処分 : クーデター未遂後の言論状況をジャーナリストたちが語る

2017年4月28日(金)19時50分
小林恭子(在英ジャーナリスト)

ベイダー氏:最後に、オランダ・アムステルダムに長く住むトルコ人ジャーナリスト、エフェ・ケレム・ソゼリ氏に聞いてみよう。

ツイッターにアカウント閉鎖依頼が続々と

エフェ・ケレム・ソゼリ氏:トルコの監視状況を調べている。半年ごとのスナップショットを記録し、トルコの表現の自由度を測っている。

2015年、エルドアン大統領は各地でツイッターへのアクセスを遮断した。これは前年に地方選があり、汚職についての情報がツイッターで氾濫したからだ。

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トルコ人ジャーナリスト、ソゼリ氏 IJF

14年の地方選実施前、警察内のある人物が汚職疑惑について情報をリークした。エルドアン氏やその家族、内閣にいる人物が関与していることを示唆する内容だった。政府側は、ツイッターで情報が流れたので閉鎖することで情報の拡大を防ごうとした。アカウントの閉鎖数は年を追うごとに増えた。

ツイッターでなくても情報は取れると思うかもしれないが、ほかの情報源となる既存のメディアが政府批判をしない状況にあるので、ツイッターが重要だった。

ツイッターから得た情報とトルコの裁判所の閉鎖命令などの情報を基にすると、閉鎖されたあるいは一時保留状態となったアカウントは2014年で2000を超え、15年は5000近くとなった。

また、下の画像は内容の削除依頼が出されたアカウントの数だ。赤がトルコで青が世界の残りの地域だ。いかにトルコが突出しているかが分かると思う。

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削除依頼が出されたアカウントの数 ソゼリ氏作成

トルコ政府は削除の実施を非常に効果的に行うことができる。それは法の支配が大きく低下しているからだ。裁判所からの命令だといえば、閉鎖・停止はしやすくなる。市民が苦情を言っても、逆に挑戦されてしまう。

最初の頃はツイッター側の弁護士が上訴し、裁判所の命令を覆す場合があった。しかし、「ツイッター・トランスペアレンシー・リポート」によると、覆す比率がどんどん低下した。1か月ほど前に出たリポートではゼロになっていた。裁判所の命令が政府・当局の命令と同じになっている。

トルコ当局は、「このアカウントはテロのプロバガンダをしている」として、閉鎖を要求する。私はこうした動きを非常に細かく追っているが、ツイッターの利用規則に違反しているとされるアカウントは実は(トルコ内の少数民族)クルド人の運動家が投獄中の指導者を批判しているだけだったりする。

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