70冊以上の「トランプ本」から選んだ読むべき3冊
普段目にするメディアから得られる言説は、主に都市部の視点であることが今回の大統領選挙で明らかになった。だが、だからといって私たちには、アメリカの中西部の田舎に住み、その州からほとんど外に出たこともない「普通の」アメリカ人の声は、なかなか知りようもない。その意味で、150人もの「普通の」アメリカ人の声を、私たちの代わりに聞き取ってくれている本書は、その実態をつかめるものとしてだけでも、大いに意味のあるものだろう。
他の人の言説から分かったつもりになるのではなく、なるべく一次情報に近い情報から、自ら思考してみるためにも。他の本と合わせて、読んでおきたい一冊だ。
エスタブリッシュ層の捉えた、トランプの実像
4位 『トランプ』(文藝春秋)
冒頭にも述べたとおり、ワシントン・ポスト紙が3か月にわたって20人以上の記者を投入して記した、トランプの人物像に迫る本である。トランプの全人生をさまざまな資料や証言から読み解き、伝記の体裁で書き上げた書。原書は8月に発売されている(日本語の翻訳書は10月に発売) 。
前にあげた2冊は、トランプ自身というよりも、なぜトランプが注目されているのか、トランプが大統領となった後に世界はどうなるのか、そのようなマクロな視点から(情報源はミクロでありながら)記した本だった。一方この本は、トランプという「人物」の実像に迫るもの。両方合わせて読んでみると、違う解釈が見えてくるはずだ。
また、違う見方として、「トランプ勝利をまったく予想できなかった都市部のメディアが記した本」として読むおもしろさもある。
本書は、全体的には批判的でありながら、「非常に中立的な立場で」書いたという言葉のとおり、丁寧にトランプの実像を描いている。しかし、そうした実像をメディアに載せても、トランプ支持層にはほとんど届かなかった、あるいは響かなかったのだ。その事実について本書から考察するのも、おもしろいだろう。
原書の出版から半年がたち、新刊としての話題性がなくなってはいるものの、選挙戦の結果も分かった今だからこそ、他の本と併せて読み返してみるべき本である。
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