最新記事

BOOKS

70冊以上の「トランプ本」から選んだ読むべき3冊

2017年4月13日(木)15時18分
hontoビジネス書分析チーム

普段目にするメディアから得られる言説は、主に都市部の視点であることが今回の大統領選挙で明らかになった。だが、だからといって私たちには、アメリカの中西部の田舎に住み、その州からほとんど外に出たこともない「普通の」アメリカ人の声は、なかなか知りようもない。その意味で、150人もの「普通の」アメリカ人の声を、私たちの代わりに聞き取ってくれている本書は、その実態をつかめるものとしてだけでも、大いに意味のあるものだろう。

他の人の言説から分かったつもりになるのではなく、なるべく一次情報に近い情報から、自ら思考してみるためにも。他の本と合わせて、読んでおきたい一冊だ。

エスタブリッシュ層の捉えた、トランプの実像

honto170413-book3.jpg

4位 『トランプ』(文藝春秋)

冒頭にも述べたとおり、ワシントン・ポスト紙が3か月にわたって20人以上の記者を投入して記した、トランプの人物像に迫る本である。トランプの全人生をさまざまな資料や証言から読み解き、伝記の体裁で書き上げた書。原書は8月に発売されている(日本語の翻訳書は10月に発売) 。

前にあげた2冊は、トランプ自身というよりも、なぜトランプが注目されているのか、トランプが大統領となった後に世界はどうなるのか、そのようなマクロな視点から(情報源はミクロでありながら)記した本だった。一方この本は、トランプという「人物」の実像に迫るもの。両方合わせて読んでみると、違う解釈が見えてくるはずだ。

また、違う見方として、「トランプ勝利をまったく予想できなかった都市部のメディアが記した本」として読むおもしろさもある。

本書は、全体的には批判的でありながら、「非常に中立的な立場で」書いたという言葉のとおり、丁寧にトランプの実像を描いている。しかし、そうした実像をメディアに載せても、トランプ支持層にはほとんど届かなかった、あるいは響かなかったのだ。その事実について本書から考察するのも、おもしろいだろう。

原書の出版から半年がたち、新刊としての話題性がなくなってはいるものの、選挙戦の結果も分かった今だからこそ、他の本と併せて読み返してみるべき本である。

【参考記事】トランプに熱狂する白人労働階級「ヒルビリー」の真実
【参考記事】トランプ政権下でベストセラーになるディストピア小説

hontoビジネス書分析チーム
本と電子書籍のハイブリッド型書店「honto」による、注目の書籍を見つけるための分析チーム。 読みたい本に必ず出合える。読みたい本を読みたい形で読める。「honto」は丸善ジュンク堂等の書店・本の通販・電子書籍ストアがひとつになって生まれた、まったく新しい本のサービス。
https://honto.jp/

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中