最新記事

BOOKS

70冊以上の「トランプ本」から選んだ読むべき3冊

2017年4月13日(木)15時18分
hontoビジネス書分析チーム

気鋭の国際政治学者が分析する「分断されるアメリカ」

honto170413-book1.jpg

1位 『「トランプ時代」の新世界秩序』(潮出版社)

本書は2017年1月19日の発売だ。トランプ大統領の正式就任が1月20日なので、わざわざ就任日に合わせて発売したと考えられる。しかし言い換えれば、就任演説を待たずに発売したということは、本書で伝えるメッセージは就任演説の前後で変わらない、ということなのだろう。

それはすなわち、本書が、演説など瞬間・瞬間の出来事をとらえて浅い分析や私見を述べる本ではなく、トランプに限らないアメリカの過去の趨勢の分析から「この時代にこのような(トランプ)旋風が生じた歴史的意味とは何か」を導き出そうとしている本だということだ。(本書から引用、括弧内は筆者補足)

つまり本書の魅力は、「トランプ現象の本質を探り、分断されるアメリカの実像を分析」することによる歴史の流れの把握と、「変わりゆく世界において、アメリカがいかなる自己イメージをもち、新大統領の外交は何を目指すのか」という将来予測である。出来事をただ知るのではなく、分析された「意味合い」を知りたい方々には、適した書籍だろう。

なお、著者の三浦瑠麗氏は、近年、討論番組などメディアでしばしば見かけるようになった気鋭の国際政治学者。東京大学政策ビジョン研究センター講師であり、著書には『日本に絶望している人のための政治入門』(文春新書)、『シビリアンの戦争』(岩波書店)がある。その著作からも分かるように、民主主義国における戦争・平和の問題に詳しく、トランプ現象の分析についても外交安全保障を中心に論じているのが特徴的だ。

トランプを支持するに至ったアメリカの「本当の」姿

honto170413-book2.jpg

3位  『ルポ トランプ王国』(岩波書店)

前に紹介した『「トランプ時代」の新世界秩序』が、主に膨大な文献の分析から「歴史的意味」を抽出した書だとするならば、この本は、丹念なフィールドワークからアメリカの「本当の姿」を導き出した書である。

著者は朝日新聞社のニューヨーク特派員。その取材力はさすがのものであり、「なぜトランプがこんなに強いのか?」という疑問に対してニューヨークなど都会の人々の取材で答えがみつからないとあれば、アメリカの田舎に向かう。「山あいのバー、ダイナー、床屋、時には自宅に上がり込んで」、丁寧にそして深く話を聞き出す手腕はすごい。その数、なんと14州150人。

特に、民主党の基盤でありながら、今回トランプ支持にまわる人が多く出た地域、通称「ラストベルト(さびついた工業地帯)」と呼ばれるエリアに含まれる5州の取材は、興味深いものだ。

「彼ら(ラストベルトの労働者たち)に「そもそもなぜ民主党支持だったのか?」と質問しても、「そんなこと考えたこともない」、「この街で生まれ育てば、みんな民主党支持だった」などと答える。」(本書から引用、括弧内は筆者補足)

「トランプは、専門家の予想を覆し、ラストベルト諸州で連勝したことで第45代大統領の座をつかんだ」のだ。(同上)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ダウ436ドル安、CPIや銀行決算受

ビジネス

NY外為市場=ドル急伸し148円台後半、4月以来の

ビジネス

米金利変更急がず、関税の影響は限定的な可能性=ボス

ワールド

中印ブラジル「ロシアと取引継続なら大打撃」、NAT
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 2
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 5
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 6
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中…
  • 7
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 8
    「オーバーツーリズムは存在しない」──星野リゾート…
  • 9
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 10
    歴史的転換?ドイツはもうイスラエルのジェノサイド…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中