最新記事

韓国

朴槿恵前大統領、逮捕 崔順実と共謀で賄賂強要など13の容疑

2017年3月31日(金)09時42分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

収賄などの容疑で逮捕、収監される朴槿恵前大統領 

<韓国の歴史上、3人目となる大統領経験者への逮捕状が発行された。30日にソウル中央地裁で尋問を受けた朴槿恵前大統領に対して、地裁は証拠隠滅の恐れがあるとして検察からの逮捕請求を認めた。前大統領はソウル拘置所に収監され捜査を受ける>写真はYTNから

朴槿恵(以下、パク・クネ)前大統領は、憲法裁判所で罷免されてから21日後の31日未明、捕われの身となった。韓国メディア・マネートゥデイによれば、前日、パク前大統領に対する尋問を行ったソウル中央地裁のカン・プヨン担当判事は「主要犯罪容疑が解明され、証拠隠滅の懸念があり、拘束の理由と必要性、相当性が認められる」と逮捕状発行について説明した。

検察によると、パク前大統領は"影の実力者"であった崔順実(以下、チェ・スンシル)容疑者と共謀して、李在鎔(以下、イ・ジェヨン)サムスン電子副会長の経営権承継を助ける見返りに433億ウォンを受けることを約束した疑い、ミール・Kスポーツ財団に774億ウォンの出資金を強要した疑いなど13の容疑を受けている。

韓国では、これまでに1995年全斗煥(チョン・ドゥファン)・盧泰愚(ノ・テウ)の2人の大統領経験者に対して逮捕状が出されたことがある。 チョン元大統領は内乱の疑い、ノ元大統領は収賄容疑でそれぞれ逮捕された。 パク前大統領は、彼らに続き逮捕された大統領という不名誉を受けることになった。

逮捕令状の決定が下されてから1時間半後の午前4時29分頃、ようやく車に乗ったパク前大統領がソウル中央地検から出てきた。前日自宅を出た当時着ていた藍色のコートをそのまま着て、さらに固い表情で車の後部座席に座り、憔悴した表情で正面を見つめるだけだった。午前4時45分、ソウル拘置所に到着したパク前大統領は、すぐに収監された。

30日逮捕状請求に対する尋問での攻防

30日パク元大統領は午前10時20分にソウル中央地裁に到着した。裁判所の入口に事前に設けられた「フォトライン」に立ち止まることはなく足早に裁判所に入っていた。待ち構えた取材陣の前を通り過ぎるときも終始固い表情を崩さず、「賄賂容疑を認めるのか」という問いかけにも沈黙を守り、尋問が行われる321号法廷へと階段を上っていった。

韓国メディアNEWSISによれば、尋問は検察側から21日に取り調べを担当した刑事8部ハン・ウンジェ部長検事と特捜1部のイ・ウォンソク部長検事が、パク元大統領側は取り調べに立ち合ったユ・ヨウンハ、ジョン・ジャンヒョン弁護士が出席した。

【参考記事】韓国検察、朴前大統領の逮捕状を請求 有罪なら懲役45年も

逮捕状請求の理由は?

検察はパク前大統領に対して全部で13におよぶ容疑──職権乱用権利行使妨害、強要、強要未遂、公務上秘密漏洩、特定犯罪加重処罰法上のわいろ授受と第3者賄賂授受など──のうち、逮捕状請求では90ページの半分ちかくを李在鎔(以下、イ・ジェヨン)サムスン電子副会長から433億2800万ウォン(約43億円)台の賄賂を受け取った容疑について割いていた。

また、パク前大統領が21日の取り調べで、大半の容疑を否認した点も逮捕状を請求するうえで重要な判断要素となった。 パク前大統領は当時、14時間の取り調べの過程で、一部の事実関係を除いては大半の容疑を否認したが、このような陳述態度などを考慮すると証拠を隠滅する恐れがあるというのが検察側の判断だ。

検察関係者は「事案の重大性、証拠隠滅の憂慮、逮捕された共犯者との公平性と諸情況を総合した場合、逮捕状を請求するのが法の原則に合致すると判断した」と話した。

これに対し、パク前大統領と弁護団は、これまで主張していたのと同様に全ての容疑を否定したうえで、「自宅で蟄居同然の生活をするため、逃亡や証拠隠滅のおそれはなく、検察が必要性がないのに無理に逮捕をさせようとしている」と反論したとされる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

2月完全失業率は2.4%に改善、有効求人倍率1.2

ワールド

豪3月住宅価格は過去最高、4年ぶり利下げ受け=コア

ビジネス

アーム設計のデータセンター用CPU、年末にシェア5

ビジネス

米ブラックロックCEO、保護主義台頭に警鐘 「二極
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中