米ブラックロックCEO、保護主義台頭に警鐘 「二極化が助長」

米資産運用大手ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は31日、トランプ米大統領による一連の関税導入を控え、投資家に対し「保護主義が勢いを増して戻ってきた」と警告した。2022年11月撮影(2025年 ロイター/David 'Dee' Delgado)
Iain Withers Ross Kerber
[ロンドン/ボストン 31日 ロイター] - 米資産運用大手ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は31日、トランプ米大統領による一連の関税導入を控え、投資家に対し「保護主義が勢いを増して戻ってきた」と警告した。
フィンク氏は株主に対する年次書簡の中で、富裕層がさらなる富を築き、それ以外がさらに困窮するという二極化した経済において、現在、あまりにも多くの人々が繁栄を逃していると指摘。この分断が保護主義政策の台頭を助長したとした。
その上で、より多くの投資家がプライベート市場にアクセスできるようにすることで、富の格差に対処できるという見方を示した。
フィンク氏は「資本主義は機能する。ただ、あまりにも少数の人々にとってだ」と述べた。
自身が話したほぼ全ての顧客らが「近年のどの時期よりも」経済について不安を抱いているとしたが、長期的には市場は好調を維持するとの見通しを示した。
ただ、約1万語に及ぶ書簡の中でトランプ氏については一言も触れていない。
トランプ氏は4月2日に相互関税について発表するとし、この日を「解放の日」と位置づけている。
フィンク氏は、ブラックロックが今月初めにパナマ運河の港湾運営権を巡り香港企業CKハチソン・ホールディングス(長江和記実業)と合意した取引には言及している。
トランプ氏はブラックロックが主導する投資家連合による運河の運営権取得を称賛した。この取引はブラックロックがトランプ氏の保護主義政策から恩恵を受ける可能性を示しているが、フィンク氏は保護主義を問題視していることを明確にした。
保護主義の台頭によって「資本主義はうまくいかず、何か新しいことを試す時だという暗黙の前提」が生じていると述べた。
このような問題を解決するには、インフラやプライベートクレジットなど、より高いリターンが期待できるプライベート市場への消費者のアクセスを拡大することなどを通じて市場の「民主化」をさらに進める必要があると主張した。
プライベート資産が標準的な投資ポートフォリオに組み込まれる可能性も示唆。「プライベート資産はより大きなリスクを伴う可能性があるものの、(インフレ対策や、安定性、リターンなど)大きなメリットももたらす」と述べた。
フィンク氏はまた、政府の債務負担が増大する中、ドルの基軸通貨としての地位は「永遠に続く保証はない」と警告した。