最新記事

アメリカ経済

米株急落、トランプ手腕を疑問視し始めたウォール街

2017年3月27日(月)19時28分
リア・マクグラス・グッドマン

ニューヨーク株式市場は先週、トランプ大統領就任以来最大の下げ幅を記録した Lucas Jackson-REUTERS

<歴代政権のなかでも政策が通らず動きも遅い。オバマは今頃は銀行を救い8500億ドルの財政出動を始めていた。挫折続きのトランプ政権に先週から米株価も急落、投資家は過剰な期待を修正し始めた>

ドナルド・トランプ米大統領は本当にクローザーなのか──ウォール街は疑いを持ち始めている。

ポール・ライアン下院議長率いる与党・米共和党指導部は先週、トランプを「究極のクローザー」などと呼んで持ち上げたが、ウォール街は真に受けなかった。ニューヨーク株式市場は先週、トランプが大統領に就任して以来最大の下げ幅を記録した。

市場の反応は当然だ。

【参考記事】「トランプ自体がリスク」という株式市場の警戒感

トランプが最優先の目玉政策に掲げていたオバマケア(医療保険制度改革)の廃止代替法案「アメリカン・ヘルス・ケア・アクト(AHCA)」が24日、共和党内の票固めの失敗で頓挫した。これを受けて、大企業で構成するダウ工業株30種平均の下げ幅は一時100ドルを超えた。ライアンはトランプに、代替案は可決に必要な過半数の賛成を確保できる目途が立たないため、採決を断念すると伝えた。「非常に惜しいところまで来ていた」とライアンは言った。

トランプは声明で「チームプレイヤーとして取り組み、たくさんのことを学んだ」と述べ、失敗の責任は古めかしい米議会の規約にあると弁明した。採決断念に「がっかりしたし、少し驚いた」としたうえで、「忠誠心について多くを学んだ」と強調した。

政策実現に疑問符

トランプに対する失望売りは24日より早く始まっていた。21日には、ダウ平均とS&P500社株価指数がともに1%以上下落した。

【参考記事】ウーバーはなぜシリコンバレー最悪の倒産になりかねないか

米金融大手ゴールドマン・サックスのマネジング・ディレクターのマイケル・ペーズは最近、当初トランプ政権を楽観視していた投資家の見方が変わってきたと指摘する。共和党が上下両院で過半数を握るにも関わらず、「歴代政権の中でも目立って政策のコントロールが効かず決定が遅い」ことから、トランプの政策実現能力に疑問符がついているのだ。

バラク・オバマ前大統領の場合は、就任した2009年の今頃までには、景気刺激策として8500億円の財政出動に乗り出し、金融危機後の金融機関を救済する法案を通過させたほか、オバマケアや温室効果ガスの排出量取引制度の土台を築いていた。

【参考記事】「スイッチ」で任天堂はよみがえるか

オバマケアの代替案の採決は、ディール(取引)のうまさを自画自賛するトランプが政治手腕を発揮する絶好のチャンスだった。だが「共和党下院議員は法案を支持するか、さもなくば」とトランプが脅しをかけたにもかかわらず、十分な賛成票は集まらなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノルウェー・エクイノール、再生エネ部門で20%人員

ワールド

ロシア・イラク首脳が電話会談 OPECプラスの協調

ワールド

トランプ次期米大統領、ウォーシュ氏の財務長官起用を

ビジネス

米ギャップ、売上高見通し引き上げ ホリデー商戦好発
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中