自衛隊の南スーダン撤退で見えた「積極的平和主義」の限界
首都ジュバで排水管を組み立てる自衛隊員(14年) James Akena-REUTERS
<治安悪化が深刻な現地から自衛が引き揚げれば、日本はリスクを負わない国だと思われる>
日本政府は今月10日、国連の南スーダン派遣団に参加している陸上自衛隊の施設部隊を5月末で撤収させる方針を決めた。部隊は12年から平和維持活動(PKO)に加わり、首都ジュバ近郊で道路建設などに当たってきた。
安倍晋三首相は記者会見で、部隊が担当する施設整備に「一定の区切りをつけることができると判断した」と説明。今後は「積極的平和主義」の旗の下、人道支援などで平和づくりに貢献していくと強調した。
公式見解はさておき、今回改めて浮き彫りになったのは、海外で人道支援や災害救援以外の任務に当たる自衛隊の限界だ。安全保障関連法が昨年3月に施行されたにもかかわらず、日本が果たす「積極的な」役割は大幅に限られている。
その原因は、今なお日本の政治と社会に強く残る、自衛隊が海外で戦闘に近い状況に直面することへの強い抵抗感。抵抗感を引き起こしているのは、日本に強く残る第二次大戦のトラウマだ。戦争の惨禍は海外における軍隊の冒険主義がもたらしたと考えられているため、日本社会は自衛隊員が海外で発砲、あるいは人を殺さざるを得ない状況に置かれることに嫌悪感を抱いている。
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それゆえ日本政府は、PKO協力法に自衛隊の参加条件を定めたPKO5原則を盛り込んだ。
南スーダン派遣団に参加した自衛隊について激しい議論を呼んだのは、南スーダンは内戦状態なのかどうか、という点だ。もしそうなら「当事者間の停戦合意の成立」を求めた5原則の第1条に違反している恐れがあり、政府が自衛隊を撤収させてもおかしくない。
この議論は政府が南スーダンに駐留する自衛隊に「駆け付け警護」の任務を付与しようとしたことで、さらに紛糾した。
昨年11月、駆け付け警護が新たな任務として加えられたが、自衛隊が活動を継続できるほど南スーダンが安全なのかどうかは依然として疑問視されていた。こうした状況での撤退発表は、南スーダンの治安が悪化しており、自衛隊員に死傷者が出る恐れがあることを政府が暗黙のうちに認めたのと同じだ。