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自衛隊の南スーダン撤退で見えた「積極的平和主義」の限界

2017年3月24日(金)16時15分
辰巳由紀(米スティムソン・センター主任研究員)

日本国内向けには、安倍の判断は正しい。自衛隊員に死傷者が出れば、今後の国連PKO参加に反発が出かねないからだ。実際、93年にカンボジアPKOに参加した警察官が殺害されると、日本の警察はPKOに要員を送らなくなった。

ただし今回の撤収決定は、国際平和活動への日本の積極的関与を唱えてきた安倍の主張と矛盾する。現在、南スーダン派遣団に従事している1万5000人のうち各国の軍関係者は1万1000人。現地の治安が悪化していることを考えれば、軍関係者を派遣する必要性は高まりこそすれ、減ることはない。この時点で自衛隊を撤収させれば、日本は他国と共にリスクを負う気はないと受け取られかねない。

【参考記事】自衛隊はPKOの任務激化に対応を――伊勢崎賢治・東京外国語大学教授に聞く

もちろん、自衛隊員のPKO派遣だけが意味ある貢献ではない。だが、記者会見での安倍の「活動は終了するが南スーダンの発展のために貢献は続ける」という言葉は、国連活動への自衛隊派遣をより厳しく制限されていた日本の歴代首相の言説と何ら変わらないように聞こえる。

これが日本の現実なら、安倍は自衛隊員を派遣せずに日本が国際平和にどんな「積極的」貢献を果たすのかをより明確に伝える必要がある。でなければ、安倍の「積極的平和主義」は、かつて日本が批判された「札束外交」と何も変わらない。

[2017年3月28日号掲載]

From thediplomat.com

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