南シナ海進出に態度を硬化 マレーシアは親中国、返上か
マレーシアの態度硬化を裏付けるように、上級閣僚の1人はロイターの取材に対し、「領海侵犯には断固たる行動を取らなければならない。さもなければリスクが容認されたことになってしまう」と話している。
デリケートな問題だけに匿名を希望しつつ、この閣僚は、3月にマレーシアが見せた対応と、その数日前に隣国インドネシアで起きた同様の事件との対比を強調した。
「インドネシアの水域に侵入した中国漁船は、ただちに追い払われた。しかし中国の船舶がわが国の水域に侵入しても何も起きない」とこの閣僚は言う。
マレーシア議会では先月、副外相が他の東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国と同様にマレーシアも中国の主張する悪評高い「九段線」を認めていないことを繰り返した。中国は「九段線」を掲げて、南シナ海の90%以上の水域について自国の権利を主張している。
限られたオプション
MMEA当局者の説明する事件について、中国外務省は、中国・マレーシア両国は対話と協議を通じた海事紛争の処理について「高いレベルのコンセンサス」を共有している、と述べている。
同省の華春瑩報道官は、「この件については引き続きマレーシアと緊密な連絡を取る予定だ」としている。
マレーシア政府がさらに強硬な姿勢を取ることに及び腰なのは、マレーシアが中国に大きく依存していることからある程度説明できるかもしれない。
中国はマレーシアにとって最大の輸出先であり、マレーシアはASEAN10カ国のなかで中国からの財・サービスの輸入が最も多い。
また複数の中国国有企業は昨年、マレーシアの政府系投資ファンド1MDBから数十億ドル相当の資産を購入している。1MDBは債務超過に苦しんでおり、ナジブ首相にとって大きな悩みの種になっていた。
マレーシアの国内問題への中国の影響力も、マレー人が多数を占める国家にとって常に懸念事項となっている。マレーシアの中国系住民は人口の約4分の1を数える。
昨年9月、中国・マレーシア両国の外交関係に緊張が走った。マレー系住民によるデモに先立って駐マレーシア中国大使が首都クアラルンプールにあるチャイナタウンを訪れ、「中国系住民の権利に影響するような行動に対しては、中国政府は遠慮なく批判させてもらう」と警告したのである。
大使は召喚され、発言について説明を求められたが、中国外務省は大使を擁護している。