南シナ海進出に態度を硬化 マレーシアは親中国、返上か
漁業紛争
ところが3月に多数の中国漁船が、領有権が争われている南沙(スプラトリー)諸島の南方にあり、豊かな漁場の広がる南ルコニア礁付近に侵入した際には、マレーシアは海軍艦艇を派遣し、中国大使を召喚して説明を求めるという異例の動きを見せた。
中国外務省は、「関連の水域」において自国の漁船が通常の漁業活動を行っていただけであるとして、事態を重要視しなかった。
わずか数週間後、マレーシアはミリ市の南にあるビントゥル付近に海軍の前進基地を設ける計画を発表した。
マレーシアの国防相は、この基地にはヘリコプター、無人機、特殊部隊を配備し、過激派組織「イスラム国」に同調する勢力が自国の豊かな石油・天然ガス資産を攻撃する可能性に対処することが目的だと強調している。しかし、そうした勢力が拠点としているのは、北東方向に何百キロも離れたフィリピン南部だ。
一部の当局者や有識者は、この基地の設置に関してもっと大きな要因となっているのは、サラワク州沖における中国の活動だと話している。
「石油・天然ガス資産の安全保障を強化する場合、国家・非国家双方の脅威に対して防衛することになる。だから、国防相の発言にもいくばくかの説得力はある」と語るのは、シンガポールの東南アジア研究所(ISEAS)で南シナ海問題を専門とするイアン・ストーリー(Ian Storey)氏。
「だが、ダーイシュ(イスラム国の別称)対策が本来の動機だろうか。私にはそうは思えない」とストーリー氏は言う。