北朝鮮外務次官訪中を読み解く――北朝鮮の狙いと中国の思惑
しかし事実上の目的は、あくまでもアメリカによるTHAADの韓国配備に抗議するものであったことは、想像に難くない。すべてが同じ2月28日に行われたという事実と、中国政府全体による「これは米韓による宣戦布告だ」と言わんばかりの抗議声明から見ても明らかだろう。
ということは、中国が北朝鮮外務次官を受け入れたのは、THAAD問題が原因だという傍証になる。それは米韓への牽制と見ていいだろう。
北朝鮮の狙い:「北朝鮮代表団のマレーシア入り」という外交攻勢で切り崩す
今般の北朝鮮外務次官訪中は、中国が言い出したのか、それとも北朝鮮が言い出したのかを判断するには、北朝鮮の代表団が、同じ2月28日にマレーシア入りした事実に注目するといいだろう。
外交部の耿爽報道官は2月28日、「中国外交部の招聘により北朝鮮外務次官らが訪中する」と言っているが、これは北朝鮮側から要求があっても、中国側が批准(承諾、許可)すれば、「中国政府(外交部)の名において招聘した」という形を取る。だから、この表現から判断することはできない。
北朝鮮は同じ日に中国とマレーシアを同時訪問することによって、マレーシアに圧力を掛けているものと解釈することができる。中国のTHAADに対する強烈な抗議という「弱みにつけ込んだ」実に巧みな外交攻勢だ。
マレーシア訪問の目的を北朝鮮代表団は「遺体の引き渡し」「朝鮮籍公民の身柄引き渡し」および「北朝鮮・マレーシア両国の友好発展」と述べているが、マレーシアが北朝鮮と国交断絶をするかもしれないという危機への警戒感が最優先しているものと言っていいだろう。そのためにマレーシアよりは「大国」とみなされるであろう「中国」を選び、同時訪問を果たしたものと解釈する。
ワシントンでは6ヵ国協議の日米韓首席代表が会談
一方、ワシントンでは27日、北朝鮮の核問題を巡る6ヵ国協議の日米韓の首席代表が会合を開き、核・ミサイル開発を進める金正恩体制に対して「強い国際的圧力が必要だ」とする共同声明を発表した。出席したのはジョセフ・ユン(米国務省北朝鮮担当特別代表)金杉憲治(日本外務省アジア大洋州局長)、キム・ホンギュン(韓国外務省・朝鮮半島平和交渉本部長)の3人だ。