身近な「サイコパス」から身を守るための知識
また興味深いのは、サイコパスが人の弱みにつけこみ、コントロールする技術を身につけているということだ。
――まず、相手に貸しを作る。お金で困っていたらお金を、人脈で困っていたら人脈を提供する。頼まれなくても親切にする。関係の初期段階ではとにかく「この人はいい人だ」「自分を助けてくれて、本当にありがたい」と思わせる。
ところが、ある程度の信頼関係ができたところで、脈絡なく、あるいは非常に些末なことでキレる。
「あんなによくしてくれた人が怒ったということは、自分は何か悪いことしたのかな?」
本当は謝る理由はないのに、関係を維持するために謝っておこうかな、という気持ちに相手はなっていきます。
それを繰り返して、相手が下手に出て来たところで言いがかりや難癖をつけて「あんなによくしてあげたのに、どういうこと?」などと怒る。普通の人は、恩のある人物から嫌われたくないので、自分が悪いわけではないと思っていても、たいていは謝罪します。
するとまた態度を豹変させ、謝罪を受け入れるのです。そして「そうやって素直に謝ることができるのは、あなただけですよ」などと、相手の自尊心をくすぐるような持ち上げ方をする。(50~51ページより)
このようにアメとムチを繰り返し、被害者側の「怒られたくない」「嫌われたくない」という罰を回避する気持ち、「褒められたい」「またいい思いをしたい」という欲望を巧妙に刺激して、借りがある人にはなにかお返しをしなければならないという「好意の返報性」を悪用することによって、上下関係を完成させていくというのである。
実際のところ、職場や恋愛など、狭い人間関係のなかにおいてはよくありそうな話ではあるが、もしかしたらその相手はサイコパスだったのかもしれないということだ。極端な場合には、その人物の許可なしには行動できなくなってしまうというようなことさえ起こりうるという。
サイコパスはこうしたテクニックを駆使して、人を操作していきます。冷徹に"カモ"の目や表情から心情の揺れ動きを読み取り、ここまではいじめて大丈夫、ビクビクしたところで相手のここを持ち上げれば"落ちる"、といったことをごく自然にやってのける能力を持っているのです。(52ページより)
ちなみにサイコパスには、「捕まりにくいサイコパス」(成功したサイコパス、勝ち組サイコパス)と、「捕まりやすいサイコパス」(成功していないサイコパス、負け組サイコパス)が存在するという。
【参考記事】サイコパスには犯罪者だけでなく成功者もいる