最新記事

日本経済

日本の人口減で中小企業が事業再編 M&A仲介に商機

2017年2月19日(日)18時01分

2月17日、中小企業の合併・買収(M&A)仲介会社が旺盛な需要に支えられている。写真は都内で昨年7月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

中小企業の合併・買収(M&A)仲介会社が旺盛な需要に支えられている。縮小する国内市場で、M&Aを通じて成長を目指す企業が増えているほか、後継者のいない事業主が自社を譲渡するケースが増えているためだ。地方銀行などとの連携も功を奏し、大手証券がターゲットとしない顧客層にアクセスを増やしている。

「日本では人口が急速に減少するため、会社はこれからは単独では成長することができない」──。M&A仲介会社、日本M&Aセンター<2127.T>の分林保弘会長はこう話し、日本企業の再編の必要性を強調する。

厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所によると、日本の人口は2060年までに2010年比で3割減少する見通し。こうした人口動態を背景に、中小企業のM&Aを専門に扱う仲介会社は、そろってニーズ拡大を指摘する。

分林会長は、これからの中小企業は「グループ企業にならないと海外市場にも出ていけない。1社単独で生き残れない。これが日本の時代の流れで、M&A市場はますます拡大する」と話す。

経済の屋台骨、後継者不足

中小企業白書によると、日本の労働人口の7割は中小企業に雇用され、国内に380万ある企業のうち99.7%は中小企業で、経済の屋台骨となっている。 しかし、後継者不足などを背景にその将来が危ぶまれている。東京商工リサーチによると昨年は休廃業・廃業をした企業が2万9583社と前年比8.2%増加し、過去最高だった。

これを商機とみた日本M&Aセンターの業績は最高益を更新し、1月末に発表した4─12月期の連結決算は増収増益。同社が9カ月間で扱ったM&Aの案件数は406件と、今年度は前年度の420件を超える勢い。2月6日には今期の業績予想を上方修正した。同社の株価は過去1年で約41%上昇した。

同業の仲介会社も

ストライク <6196.T>、M&Aキャピタルパートナーズ <6080.T>など、M&A仲介の同業他社も似たような恩恵を受けている。両社が昨年度に成立させたM&Aの案件数は計106件と、前年比34%増加。ストライクの荒井邦彦社長は、小規模のM&A仲介は大手証券会社が取り扱わない「空白地帯になっており、われわれのビジネスはそこにうまくはめ込んだ形」という。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中