日本の人口減で中小企業が事業再編 M&A仲介に商機
M&Aキャピタルの株価は過去1年で倍以上に上昇し、東証の業種別指数(証券セクター)<.ISECU.T>の上昇率(32%)を上回った。ストライクの株価も昨年6月の新規公開(IPO)以降、倍以上に値上がりしている。 大手証券が扱うリーグテーブルの集計対象となるM&A案件は伸びが鈍化。トムソン・ロイターによると、日本企業のM&Aの案件は2016年、件数ベースで2137件と前年比4.3%の伸びにとどまり、金額ベースでは10%減少。中小の案件が急拡大しているのとは対照的だった。
地銀などと連携
仲介業者に案件を紹介するのは、主に地銀や地域密着の会計士、税理士たちだ。日本M&Aセンターと連携する東邦銀行<8346.T>の法人営業部・調査役の佐藤智春氏は、企業がM&Aを通じて事業を継続できれば、「雇用を守り地域の経済活性化にもなる」と、案件を推進していく考えを示した。
調剤薬局のリブラ・コーポレーション(大阪府豊中市)の案件では、同社を1994年に設立した乾宣子氏(59)が「小さな資本しかない自分の会社に必要な数の薬剤師を採用するのは難しい。採用しても育てられない」と判断。乾氏は昨年、自社を630店の調剤薬局を運営するクラフト(東京都千代田区)に譲渡した。日本M&Aセンターが仲介した事例だった。
調剤薬局の市場規模は7兆8000億円(調剤報酬ベース)。しかし、1100店舗を展開する業界大手のアインホールディングス <9627.T>でさえ、市場シェアはわずか3%にとどまる。ストライクは、調剤薬局の再編は今後も進むと予想している。
建設用資材製造のエスイー<3423.T>は、買収をテコに収益源を拡大している。同社は、2015年には鉄骨工事業の森田工産(鳥取県米子市)を森田浩氏(47)から2億3000万円で買収。その後、森田工産は社名をエスイー鉄建に変更。エスイーは人件費の増加が収益を圧迫し減益見込みだが、エスイー鉄建の売り上げは傘下入り後に40%増となるなど、M&Aの成果が出始めている。
(藤田淳子 翻訳:江本恵美)
