最新記事

慰安婦問題

長嶺大使帰国から1か月 釜山少女像問題は解決するか?

2017年2月9日(木)06時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部



釜山東区、少女像周辺の不法印刷物を放置 (c) 연합뉴스 TV / Youtube

「反日感情を悪用する従北左派扇動団体を告発する」(今は許しを!今は和解を...)

韓国メディア・世界日報によるとこの活動を行っているのは少女像が設置された釜山市東区の住人の崔(以下、チェ)氏で、「少女像制作の趣旨は賛成するが、日本の公館の前に設置したのは誤りだと思う。この設置により被害を受ける在日韓国人などもいるわけで、少女像は移転しなければならない」と語っている。
またチェ氏は「反日感情が強いが、反対意見を述べる権利も尊重されなければならない。私の貼るビラを市民団体側がずっと剥がすようなら、今後法的対応を検討する」と述べた。

もちろん、少女像を設置した市民団体側も、だまってはいない。釜山市東区側に、チェ氏による不法ビラを取り締まるように要請したが、厳密にいえば少女像の設置そのものが違法行為にあたるため、釜山市東区側はだんまりをきめている。先月31日には、少女像の適切な管理について市民団体と釜山市東区側とで協議する常設委員会を設置したが、今回のビラ問題についての対立から会議の日程すら決められない状態になっているという。

外交では共通の課題をもつ日韓両国

事態解決の手がかりさえないまま、混迷の度が深まってきた釜山の少女像問題だが、日韓両国とも、外交では駐留米軍の経費負担見直しなどの米トランプ政権の突きつけてくる要求や、極東海域における中国軍の勢力拡大にどう対応していくのかなど、共通した課題が多いことは明らかだ。これらの外交上の問題に日韓両国が連携して対応すべき時なのに、釜山の少女像の問題が足かせとなって、日韓両国は国益を損ねかねない状態にある。

今後の展開としては日韓両国とも16〜17日にドイツ・ボンで開かれるG20外相会議、17〜19日に開催されるミュンヘン安全保障会議に岸田外相と韓国のユン・ビョンセ外交部長官が参加し、少女像問題の解決に向けて会談を行うのではないかと予想されている。実はこのタイミングを逃すと、2月22日には島根県で「竹島の日」の式典、3月には日本から「竹島は日本の領土」と明記した学習指導要領が、また韓国では慰安婦問題を理解するための副読本がそれぞれ出てくる予定で、日韓関係にマイナス要素がさらに増えてしまう。

果たして釜山の少女像問題が2月中に解決して、日韓両国の関係改善が図れるか、それともタイミングを逸して韓国側が外交問題に対応する余裕がなくなる大統領選挙にまで突入してしまうのか......。今後の両国の交渉の行方が注目される。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、中立金利以下への利下げも 関税で物価下押し

ワールド

メルツ次期独首相、トランプ氏に「関税ゼロ」を提案へ

ワールド

スペイン全土で大規模停電、市民生活混乱 ポルトガル

ワールド

米コロラド州のナイトクラブで不法移民114人拘束、
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    【クイズ】米俳優が激白した、バットマンを演じる上…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 8
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中