トランプの政策、ISISに「復活の好機」もたらす可能性
2月8日、「イスラム国(IS)]撲滅を目指すトランプ米大統領(写真)だが、その行動が、新たなIS志願者を生み出し、米国での攻撃を刺激することによって、逆効果をもたらすリスクがあると専門家は警鐘を鳴らす。写真は2016年11月、ニューヨークで撮影(2017年 ロイター/Carlo Allegri)
トランプ米大統領は、いまや衰退期にある過激派組織「イスラム国(IS)」の壊滅を誓っているが、イスラム主義の専門家や一部のアナリストは、大統領の行動が新たなIS志願者を生み出し、米国での攻撃を刺激することによって、逆効果をもたらすリスクがあると警鐘を鳴らす。
ISはここ数カ月、戦闘における敗北続きで、イラク、シリア、リビアで支配地域を失いつつあり、資金力や実戦部隊の規模も減少するなど、目に見えて弱体化している。
「イスラム過激主義」を根絶するというトランプ大統領の宣言は、一見すると、ISの成功確率に対して、新たな一撃を加えたかのように見えるが、中東問題専門家やIS支持者によれば、トランプ大統領の誕生によって、ISが再び上昇機運を取り戻す可能性があるという。
大統領が先月、難民やイスラム圏7カ国からの入国を制限する措置を講じたことも、ISにとって有利に働く可能性がある。
この大統領令についてISは沈黙を守っているが、米司法により執行が差し止められたことで、混乱が生じている。また、この入国制限が復活するか否かにかかわらず、この大統領令は世界中のムスリムを怒らせた。なぜなら、トランプ氏は否定しているが、彼の政権が「反イスラム的」だということの証拠だと受けとめているからだ。
この点についてホワイトハウスにコメントを求めたが、回答は得られなかった。ただ先週、スパイサー大統領報道官は、こう述べている。「大統領の最優先目標は、常に米国の安全に集中することであり、宗教ではない。彼は、これが宗教の問題ではないことを理解している」
同報道官は、大統領令が米国の安全を低下させるとの見方を否定し、「一部の人は大統領令の内容を正確に読まず、見当違いのメディア報道を通じて読んでいる」と述べた。
だがこうした発言は、批判を押さえ込むまでには至っていない。
「イスラム圏諸国からの入国制限は、確実に、過激主義者の信用を落とそうとする世界的な取り組みを損なう」と、イスラム過激主義やISについての著作もあるハサン・ハサン氏は指摘する。
57の加盟国で構成されるイスラム協力機構(OIC)も、こうした「選別的で差別的な行為は、過激主義者のラディカルな主張を、つけあがらせる結果に終わるだろう」と述べている。