最新記事

アメリカ政治

トランプの政策、ISISに「復活の好機」もたらす可能性

2017年2月14日(火)08時17分

2月8日、「イスラム国(IS)]撲滅を目指すトランプ米大統領(写真)だが、その行動が、新たなIS志願者を生み出し、米国での攻撃を刺激することによって、逆効果をもたらすリスクがあると専門家は警鐘を鳴らす。写真は2016年11月、ニューヨークで撮影(2017年 ロイター/Carlo Allegri)

トランプ米大統領は、いまや衰退期にある過激派組織「イスラム国(IS)」の壊滅を誓っているが、イスラム主義の専門家や一部のアナリストは、大統領の行動が新たなIS志願者を生み出し、米国での攻撃を刺激することによって、逆効果をもたらすリスクがあると警鐘を鳴らす。

ISはここ数カ月、戦闘における敗北続きで、イラク、シリア、リビアで支配地域を失いつつあり、資金力や実戦部隊の規模も減少するなど、目に見えて弱体化している。

「イスラム過激主義」を根絶するというトランプ大統領の宣言は、一見すると、ISの成功確率に対して、新たな一撃を加えたかのように見えるが、中東問題専門家やIS支持者によれば、トランプ大統領の誕生によって、ISが再び上昇機運を取り戻す可能性があるという。

大統領が先月、難民やイスラム圏7カ国からの入国を制限する措置を講じたことも、ISにとって有利に働く可能性がある。

この大統領令についてISは沈黙を守っているが、米司法により執行が差し止められたことで、混乱が生じている。また、この入国制限が復活するか否かにかかわらず、この大統領令は世界中のムスリムを怒らせた。なぜなら、トランプ氏は否定しているが、彼の政権が「反イスラム的」だということの証拠だと受けとめているからだ。

この点についてホワイトハウスにコメントを求めたが、回答は得られなかった。ただ先週、スパイサー大統領報道官は、こう述べている。「大統領の最優先目標は、常に米国の安全に集中することであり、宗教ではない。彼は、これが宗教の問題ではないことを理解している」

同報道官は、大統領令が米国の安全を低下させるとの見方を否定し、「一部の人は大統領令の内容を正確に読まず、見当違いのメディア報道を通じて読んでいる」と述べた。

だがこうした発言は、批判を押さえ込むまでには至っていない。

「イスラム圏諸国からの入国制限は、確実に、過激主義者の信用を落とそうとする世界的な取り組みを損なう」と、イスラム過激主義やISについての著作もあるハサン・ハサン氏は指摘する。

57の加盟国で構成されるイスラム協力機構(OIC)も、こうした「選別的で差別的な行為は、過激主義者のラディカルな主張を、つけあがらせる結果に終わるだろう」と述べている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中