トランプの政策、ISISに「復活の好機」もたらす可能性
ネット上の交流フォーラムでは、聖戦主義者らが今もトランプ氏の大統領選での勝利を祝福している。同氏の見解は米国の「真の顔」を示しており、彼の政策が、武装グループの目標でもある「コミュニティの分断」をもたらすという、彼らの考えを裏付けているからだという。
「トランプ氏の当選は、信仰の土地よりも、背徳の土地に存在するあらゆる贅沢を伴う世俗的な生活をわざわざ選んだ、忠誠と貞節を失ったムスリムに対するアラー(神)の恵みだ」。ある聖戦主義者は、イスラム主義ウェブサイトの「アル・ミンバー」にそう投稿した。
失われた勢い
ISはここ数カ月、多くの側面で相当に弱体化している。イラクとシリアの一部に創設した自称「カリフ国家(預言者ムハンマドの後継者が始動する国家)」は、住民にきわめて厳格な規則を課しているが、その支配地域は縮小している。
イラクでは、北部の重要拠点であるモスルやその周辺で支配地域を失っている。米国の支援を受けたイラク軍が、2003年にサダム・フセイン体制を打倒した米軍の侵攻以来となる、イラク国内で最大規模の地上作戦を昨年10月に開始しているからだ。
ISに幻滅したスンニ派住民のなかには、イラク軍に協力し、ISとの戦いを支援する者が増えており、ISの資金源も大きな打撃を受けている。トルコも国境を封鎖し、ISへの外国人戦闘員の流入やその他の物品の密輸入を拒絶している。
イラク国内におけるISの活動範囲はもっぱら北部に集中しているものの、依然としてモスル西方のタルアファルなどの重要な拠点を保持している。それでもイラクのアバディ首相は、4月までにISをイラク領内から駆逐できると自信をのぞかせている。
ISは引き続きシリア領内で帯状の地域を支配しており、シリアで首都と称する北部ラッカにおいても頑強な抵抗を続けている。ラッカに隣接するイラク国境に近いデリゾール県の約9割を保持しており、シリア北部の都市アレッポの東側郊外の一部も支配している。またパルミラや南部のダルアー県でも数カ所を局地的に支配している。
シリアでISに敵対しているのは、トルコ軍やアレッポ北西部のシリア反体制派グループなどだ。複数の戦線でロシア空軍が支援するシリア政府軍、そしてイランの支援を受けるシーア派武装勢力とも戦っている。シリアのアサド大統領は、ISに対するトランプ氏の見解には期待が持てると語っている。
リビアでは、地中海に面した港湾都市スルトの支配権を、米軍の空爆支援を受けたリビア軍部隊に奪われた。この敗北によりISは北アフリカにおける主要な拠点を失った。ただしリビア国内の他の部分では活発な行動を続けている。
アナリストや専門家の推計では、イラク及びシリアにおけるISの戦闘員数は現在2万人。2014年には3万6000人だったが、その後、多数の戦闘員や指揮官が米国主導の有志連合による空爆で殺害された。他にも、イラク軍によって捕虜になったり、あるいは国外逃亡したりした者もいる。