入国禁止令、トランプ「敗訴」でひとまず混乱収拾へ
ロバートは、地元住民の「雇用、教育、ビジネス、家族関係や渡航の自由に、大統領令が重大な悪影響を及ぼしている」と、判断の理由を述べた。ワシントン州は「大統領令の発令により、直ちに州に取り返しのつかない損害が出ることを証明した」とし、大統領令は国家の安全を守るために必要な措置だとした政権側の主張を退けた。
トランプは4日の午後、ロバートへのツイッター攻撃を再開した。「1人の判事が国土安全保障省の入国禁止を解いたせいで、どんなに悪い奴もアメリカに入り込めるようになるなんて、この国は一体どうなっているんだ」「あの判事は、テロリストになる可能性のある人間や、アメリカの利益を考えていない奴らに国境を開く。悪党たちがとても喜んでいる!」
米ジョージ・ワシントン大学のジョナサン・ターリー法学部教授は、トランプの批判が、控訴裁で争うトランプ(司法省)の代理人の信頼性に傷をつける可能性があると指摘した。
「大統領が裁判所の権威を無視するのなら、裁判所に大統領の権威を尊重してもらうのは難しい。それどころか多くの訴訟を引き寄せることになりかねない」とターリーは言った。
入国管理は元通り
国務省と国土安全保障省は、すでに地裁の決定に従っており、5日以降は対象国から多数の渡航者が到着する見込みと発表した。米政府も難民の受け入れを6日に再開する。
イラク人のフアド・シャレフと妻と3人の子どもは、2年かけて米移民ビザを取得した。先週、家財をまとめてアメリカ行きのフライトに乗り継ぐはずだったが、エジプトのカイロで搭乗を拒否され、イラクへ送り返された。
シャレフ一家は5日、トルコのイスタンブールからニューヨーク行きのトルコ航空のフライトで、無事に搭乗手続きを完了した。
「とてもワクワクしている。すごく嬉しい」と、シャレフはロイター通信のビデオニュースで喜びを語った。「やっと許可が下りた。これでアメリカに入国できる」
レバノンのイラク人難民ラナ・シャマシャ(32)は、1日に母と2人の姉妹と渡米し、デトロイトに暮らす親戚のもとへ身を寄せる予定だった。ところが大統領令による入国禁止の影響で、渡航中止を余儀なくされた。