最新記事

農業

IoTで農作物ロスの削減を目指せ

2017年2月7日(火)16時45分
ケイト・ローレンス ReadWrite[日本版]編集部


農作物の貯蔵における課題

農作物貯蔵のプロセスはトリッキーだ。ほとんどの作物はサイロのような金属製のコンテナに大量に貯蔵される。その状態は温度や湿度、虫害に左右されやすい。

こういった課題に対し、これまでは農家が直接出向いて確認をおこなっていた。科学的と言えるものではなく、虫害は特に大きな問題であった。

虫に作物を食い荒らされるだけでなく、貯蔵庫の湿度が上がることでさらに被害は広がる。典型的な処置としては、ホスフィンなどの燻蒸剤の使用で、数日から1週間燻蒸処理されることになるとバンタスは説明する。

「燻蒸剤はタバコから花、穀物から果物などあらゆる類の作物に使われますが、その使用状況はこれまでモニタリングされていませんでした」

燻蒸剤の使用により問題は解決できるが、もしコンテナの温度が低すぎたり投与量を誤ったり、適用時間が短すぎたりした場合、虫は耐性を得て薬が効かなくなる可能性があるとバンタスは言う。また彼は、多くの農家で燻蒸剤の投与量が足りていなかったり投与期間を記録せずに使用していることを明らかにした。

Centaur社は、コンテナ内の作物の状況をモニターする商用ワイヤレスセンサーを開発した。従来型のセンサーの多くは、農作物を保管するためによく使われる金属のコンテナ内からデータを送信できないことを考えると、これは画期的なことである。

休みなく送られるデータに昆虫学に基づいたモデルが適用され、予測的分析が農家に届けられる。重要な点は、センサーがあることにより、作物は船積みから陸運までの数週間から数ヶ月に渡る、さまざまな段階でモニタリングされることだ。

「このシステムにより農家は燻蒸剤の使用や害虫コントロールに事前の予測を立てて対応することができるようになり、農作物が安全に、きちんと消毒されることを確実なものにできるでしょう」と、バンタス博士は説明する。

また、このセンサー技術による温度のモニタリングでも解決される問題がある。「温度が上昇している場所の監視も可能になります。温度が上昇する場所が発生するのはたいていの場合、虫の侵入や腐食が発生したことを意味し、それを初期段階で検知し対策をとることができます」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ヒズボラ指導者カセム師、停戦履行でレバノン軍との連

ビジネス

米国株式市場=S&P500・ダウ最高値更新、ハイテ

ワールド

WTO事務局長再任へ、トランプ関税巡り難しい舵取り

ワールド

英独仏とイランの核協議、進展なし トランプ氏復帰前
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える新型ドローン・システム
  • 3
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合の被害規模は想像を絶する
  • 4
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 5
    バルト海の海底ケーブルは海底に下ろした錨を引きず…
  • 6
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 7
    ペットの犬がヒョウに襲われ...監視カメラが記録した…
  • 8
    定説「赤身肉は心臓に悪い」は「誤解」、本当の悪者…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 4
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 7
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 10
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中