最新記事

アメリカ政治

トランプ政権が国務省高官を「一掃」 イスラム移民排除への布石か

2017年1月27日(金)16時02分
ジョン・ハドソン

事実上の高官解雇?が始まった国務省 Joshua Roberts-REUTERS

<トランプ政権が米国務省の複数の高官の辞表を一斉に受理。イスラム系移民の排除など新政権の政策を進めるために、国務省の「一掃」を図ったと見られている>

 今週ホワイトハウスは、米国務省の高官から出されていた辞表を受理し、米メディアはトランプ新政権が国務省の「一掃」を図ったと伝えた。トランプ政権の移民担当になるはずだった職員も含まれており、イスラム諸国からの移民を制限する、新政権の政策の布石とも見られている。

【参考記事】戦死したイスラム系米兵の両親が、トランプに突きつけた「アメリカの本質」

 一部には「トランプ政権で働きたくない」国務省職員の「大量脱出」という報道もあるが、実際にはこれらの高官は、ホワイトハウスから「来るにおよばず」という告知を受けている。

 政権が任命する政治任用ポストに就く政府高官は、政権交代に伴って辞表を提出するのが慣例。しかし後任が決まるまでの数カ月は慰留されるのが通例で、国務省の高官が揃って空席となるのは「異例」の事態だ。

 今回辞任させられたのは、管理担当事務次官パトリック・ケネディ、軍備管理担当の事務次官代行トム・カントリーマン、移民問題を担当するはずだった領事・行政担当の審議官ミシェル・ボンド、外交使節局長のジェントリー・スミスら。この他にも、複数の審議官や上級外交官が辞任を言い渡されているという。

【参考記事】まるで鎖国、トランプ移民政策のすべて──専門職やグリーンカードも制限、アメリカの人口も減る!

法律を守る者は邪魔?

 ケネディの辞任は誰にも予想がついた。ヒラリー・クリントンが前国務長官下の2012年にベンガジ事件(リビアのアメリカ領事館が襲われて大使らが殺害された)が発生したときは外交関係の安全対策を、クリントンの「メール疑惑」が持ち上がったときにはIT関連部署を統括していた。2件とも、トランプが昨年の大統領選で繰り返し攻撃していた問題だ。

 しかし、移民問題を担当するはずだったボンドの辞任は、国務省の現役職員やOBを驚かせた。トランプは、イスラム諸国からアメリカへの移民流入を制限しようとしている。宗教によって移民を差別するのは過去になかったことだ。国務省の元職員は、「ミシェル・ボンドは素晴らしい人物だ」と話す。「法律を遵守するタイプなので、イスラム移民を制限しようという新大統領にとってはやっかいな存在なのだろう」

【参考記事】戦死したイスラム系米兵の両親が、トランプに突きつけた「アメリカの本質」

 今回の事態について国務省のトナー広報官代行は、政権移行に際して政治任用の上級職員が(生え抜きの外交官であっても)異動するのは特別なことではない、と説明している。「政治任用を無期限と考える職員は一人もいない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中