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対中政策

南シナ海の人工島封鎖で米中衝突が現実に?

2017年1月16日(月)19時00分
ビル・ヘイトン

 長年にわたり、ジョン・マケインやダン・サリバンなど共和党の上院議員は米政府に対し、単に中国の動きに反応するのでなく、もっと南シナ海における主導権を握るよう求めてきた。まさにそうした姿勢で臨む時が来たのだと、ティラーソンは合図したのかもしれない。中国による挑発行動を待つまでもなく、アメリカが南シナ海における中国の増長を止め、同地域の隅々まで国連海洋条約を受け入れさせるよう中国に圧力をかける可能性が出てきた。

 ただしアメリカが細心の注意で何が起きているのか説明しない限り、中国はその意図を察してくれないだろう。それは世界の大半の国も同じだ。アメリカが考慮すべきリスクは多い。中国は相手が威嚇してきたと主張し、軍事衝突を挑発するかもしれない。戦艦が撃沈され、犠牲者が出れば、危機が貿易や国際社会のあらゆる政策に波及するだろう。南シナ海の情勢に詳しい米ホフストラ大学法学部のジュリアン・クー教授は、人工島封鎖は合法的かもしれないが、「米中戦争の幕開けになる」と見ている。

アメリカの威信を懸けて

 アメリカには別のリスクもある。東南アジアにおけるアメリカの同盟国や友好国からの支持を失いかねないことだ。どの国も軍事衝突を望んでいない。平和の下で発展を遂げるためにも、米中両国には足並みを揃えてもらう必要がある。東南アジア諸国の大半は、中国の海洋進出に対抗できるアメリカの強い軍事プレゼンスを求めているが、だからといってどちらかの味方につくよう強要されたくもない。アメリカが偽善国家に映るリスクもある。アメリカはこれまで「航行の自由」作戦を行ってきたが、封鎖はそれと正反対の作戦になるからだ。

 常に消えないリスクもある。海軍力が世界中でまばらに広がり、政治的な理由で各国政府が港や物流拠点へのアクセス許可を渋るなか、アメリカが中国海軍の総力に対抗する軍事行動を決行するのは難しい。いったん封鎖を宣言して失敗すれば、超大国としてのアメリカの威信に取り返しのつかない傷がつく。米海軍司令官は最近、中国海軍を「濡れた紙袋を破れないほど弱小」だと示唆した。だが、中国海洋研究所のライル・ゴールドスタインなど他の専門家は、中国の対艦弾道ミサイルの攻撃能力が増強していると長年警告し続けている。もし米中とも相手に「勝てる」と思い込めば、軍事衝突の危険性が一層高まる。

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