トランプとロシアの「疑惑文書」を書いた英元情報部員の正体
Stefan Wermuth-REUTERS
<ロシアは本当にトランプを脅迫できるネタを持っているのか。問題の文書を書いたのは、ロシアでの情報活動の経験もあるイギリスの元情報部員だった>(写真:文書を書いた元情報部員が幹部を務めるロンドンの調査会社)
今週12日、欧米の情報関係者たちは、誰もがクリストファー・スティールという人物の話題に熱中していた。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道によれば、スティールは52歳、イギリス情報機関の元情報部員で、現在は民間調査会社「オービス・ビジネス・インテリジェンス」の幹部となっている。今週、米ニュースサイトのバズフィードが報道して大きな騒動となった、トランプとロシアの深い関係を示す「文書」の作成者だ。
35ページに及ぶこの文書には、トランプがロシアの売春婦と「不名誉」な行為に及んだことや、ロシアの政府関係者がトランプの弱みを握るために金儲けになる取引の体裁を装って賄賂を持ちかけたこと、またトランプ陣営とロシアの情報機関の間の緊密な関係などが、まだ事実とは確認されていないが、書かれている。
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また文書には、大統領就任後のトランプに不利益となるような情報をロシア側が収集していたとも書かれている。文書はロシアの銀行名の綴りなどに明らかな間違いがあったものの、米情報機関は十分に「重要」と判断し、文書の内容を2ページに要約してオバマ大統領とトランプに伝えた(米情報機関はトランプに対し、文書が連邦議員や政府機関、情報機関の職員やジャーナリストの間で数カ月前から出回っていると警告した。またロシア政府がトランプに影響力を行使しようとした可能性も文書では指摘されているが、捜査機関はそれを事実とは認めてない)。
姿を消した作成者
トランプ自身は、まるでナチスドイツが仕掛けるような「フェイクニュース(デマ)」だとこの文書を非難した。そして今や作成者たるスティールに注目が集まっている。
英メディアの報道によると、スティールは「身の危険を感じ」、今週11日にロンドン近郊の自宅から姿を消した。BBCの報道では、近所の住民に3匹の猫の世話を頼んで「身を隠して」いる。ロシア政府に関する情報を流したことで、報復されることを「恐れて」いるようだ。
スティールは、入手したロシア情報の信憑性に疑問を感じ、アメリカやイギリスの情報機関に照会していた、という。情報が余りにも重大なため、スティールは大統領選に利用されることを懸念していた、と英情報機関MI6の職員はニューヨーク・タイムズに話した。
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ニューヨーク・タイムズによると、スティールがトランプのことを調べ始めた経緯はこうだ。2015年9月、ワシントンの調査機関「フュージョンGPS」がスティールを雇い、当時共和党の大統領候補として先頭を走っていたトランプに関するスキャンダルを集めさせた。
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